• 受講生インタビュー

学校管理職にコーチングを。 管理職をサポートして、コーチングに恩返し。

PROFILE
山口 香(やまぐち かおり)

大学卒業後、三重県の高校英語科教諭に採用され、以後教科指導とともに進路指導、教育相談、人権教育の分掌を担当。
2009年の県教育委員会事務局勤務を機に、主に生徒指導、特別支援教育の分野で管理職(教頭、校長、課長)を務めました。

管理職時代には、次の管理職となる候補を発掘、育成することに注力し、当時支援してきた教師の中から数名が管理職となり、それぞれの現場でリーダーとして活躍しています。特に女性のミドルリーダーを支援することは、自分のライフワークの一つでもあります。

2021年に校長職を辞して教諭に戻り、教壇に立ち生徒と関わる面白さを再び味わっています。授業の中で、生徒どうしのコミュニケーションが、より豊かで互いをインスパイアするものになるよう、コーチングスキルを織り込みながら展開しています。

「今日の問いかけ」をnoteに綴っています。質問力を磨くトレーニングのひとつ。

現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか?

 3年前まで特別支援学校の校長を務めていましたが、校長職を降りて高校の英語教諭に戻りました。「特別支援教育コーディネーター」も兼務しています。これは支援が必要な生徒への支援計画の提供や、より良い支援が提供できるように福祉や医療の専門家と教員、保護者、生徒をつなぐ仕事です。

 教育委員会事務局での勤務を経て校長になり、管理職を降りるまで12年、つまり12年も教壇を離れていた事になります。ChromebookiPadを生徒一人ひとりが当たり前のように授業で使い始めた時期に現場へ戻りました。学習指導要領が変わり、より主体的で対話的な学びを深める方向へと教育が動き始めた頃でもありました。

教育現場に戻り、授業の中でコーチングをどのように使っているのでしょうか?

 授業ではなるべく多く英語を使う(話す)機会を作っています。例えば5分ぐらいのスキットを二人組で練習する「ペアワーク」を行なうのですが、ペアを組んでワークを始める前に、必ず伝えていることがあります。それは、気持ちよく練習をするために、お互いに挨拶をしましょうということです。「nice to meet you」という生徒もいれば、小さな声で「よろしくお願いします」と言う生徒もいます。まず自分がここにいて、相手が目の前にいることをお互いにわかっていますよと伝えて欲しい。存在の承認です。

 次に、最初に読む人、最初に聞く人を決めます。「聞く人は責任重大ですよ」と言っています。間違いなく読めているかはもちろんですが、ここが良かったという部分を探すつもりで聞くよう促します。聴き終わったらコメントを返す。この発音が良かった、滑らかだった等、具体的であればあるほど良い。ペアワークが終わったら、「今日練習に付き合ってもらったお礼を言って、別れましょう」と挨拶をする。

 やっている事は、「人の言葉に心を傾けて聞く」「聞いた事を、言語化して相手に伝える」というコミュニケーションの基本の繰り返しです。「ここに気をつけて聞く」「こういうことをコメントする」等という目標を持って取り組めば、必ず生徒たち達の力になると思うからです。

 しっかり聴いてくれていると、安心して読めるよね。相手からコメントをもらうのは嬉しいよね。普段の友達との会話でもそうじゃないかな?と、いつもそこに落とすように話しています。英語の授業で、英語の勉強をしたという事と同じくらい、「相手と話す時は、こういう姿勢が大事」と学んだ事が、残っていてほしいなと思います。

 週3回の授業でコミュニケーションの大切さや楽しさを伝える機会があるのは幸せです。1年経った時の生徒達の変化が楽しみです。

管理職から一般教員へ戻り、教育現場でコーチングを活かすと考えた時、以前と変わった事はありましたか?

  勤務した経験のない支援学校に校長として赴任した時、何から何までわからない事ばかりだったので、周りの先生方にあれもこれもしょっちゅう質問していました。コーチングスキルの一つである「質問する」を、期せずして徹底的にやることになったのです。先生方は今まで聞かれたことのない事、当たり前だと思っていた事まで訊かれるので、「何訊くねん?この人は?」と不思議に感じたのではないでしょうか。私が色々なことを質問するので、先生方は「そんなこと思いもしませんでした」と困りながらも考えてくれましたし、また、考えた事を言いに来てくれるので校長室はいつも誰かが来ていました。

  今の勤務校では、私の席がある保健室にやってくる生徒には、「受容と共感」が必要だと感じています。生徒に「どうした?」と聴くと、「頭が痛い」「お腹が痛い」という。「でも、それだけじゃないように思うけど?」とさらに聴くと、「友達が…」と始まり、「AちゃんとBちゃんが、最近仲悪くて。私は、どっちも友達なんやけど」「そうなんや。間に入って大変やな。で、あなたはどうしたいの?」のようなやり取りをしています。

コーチングを、どんな事に役立てていきたいと考えていますか?

  管理職の一番大事なのは「人を育てる事」と思っています。先生の仕事が「生徒を育てる」事なら、管理職の仕事は「先生を育てる」「次の管理職を育てる」事だと、校長時代に最も強く思いました。

 ところが、管理職自身が、自分の在り方を客観視する余裕がない。管理職になる前となってから自分がどんなふうに変化したのか、管理職でいる事はどういう事なのか、今までの自分の仕事の仕方はどうだったか、生き方はどうだったのかと、振り返ることなしに人は育てられないなと思うのです。

 コーチングの学びは、学べば学ぶほど自分の中に落ちていくものです。「リレーションシップ」や「コミュニケーション」などの対人関係に係るものと、目標を持って生活する、自己基盤を整える等といった徹底的に自分と向き合うものがあります。管理職になってから一層自己基盤が大事だなと痛感しました。

 学校管理職である校長先生や教頭先生、またこれから管理職を目指したいミドルリーダーへのコーチングをとおして、管理職の先生方が日頃の業務を見直し、自己基盤を整えて、後進の指導に時間を使えるように支援したいと考えています。

管理職のサポートについて、もう少し聴かせてください。

 管理職から一般教員に戻ることにした理由のひとつは、これからの自分の生き方を改めて考えたいと言う気持ちがありました。

 この先、定年が65歳になる事が決まっています。管理職である校長や教頭には役職定年があり、60歳で一般教員に戻るのです。そのときに自分に何があって、何を大事にして、どういう人生が理想なのか、何をやりたいのか、という問いにもう一度向き合わなければならない。それなのに管理職でいる間は自分と向き合う時間も無いまま、様々な事に翻弄されているのです。

 今まで、私自身の人生の分岐点にいつもコーチがいました。これからはコーチングで、管理職のサポートをして恩返しをしていきます。

 私は、管理職に元気であって欲しいと願っています。そして、志のある人に、管理職をやって欲しいと思います。自分の人生設計を大事にして、生き生きと管理職ライフを過ごして欲しい。「あの先生は、管理職やってて楽しそう」とか、「あの先生が、管理職やってる学校は本当によかったよね」って。

 管理職は、「先生たち子供たちのために」という視点で仕組みや組織を動かしたくさんの人が幸せになる機会を増やせる素晴らしい仕事です。

 一方で、孤独の中で決断をしなければならないとき、自分の軸がぶれていないかを点検するとき、管理職にコーチがついていれば良いと思っています。

 残念なのは、教師が生徒に対して、コーチングスキルを使う事は広まってきましたが、管理職自身がコーチングを受ける、コーチをつけるという発想があまりないのです。

「管理職にコーチングを」という事ですが、来年からはどのように活動されていく予定でしょうか。

  来年から「学校管理職応援コーチ」という肩書きをもっと押し出して活動したいと考えています。色々な制約を踏まえながら、どうやって切り込んでいこうかと考えている所です。

 また学校に特化した教員向けのコーチング研修の講座、例えば保護者懇談会の場面でのやり取り、授業中の生徒とのやり取りで使える、ちょっとしたコミュニケーションの工夫やヒント、アイデア等をお話する機会を作りたいと思っています。

最後に、コーチングに対する思いはありますか?

 コーチングは人を応援するツールではあるけれど、自分自身と向き合う事、自分の中に落ちていくものという感覚があります。

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山口香(KAORIN)
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