• 受講生インタビュー

航空業界に、コーチングを通して「人財育成」の恩返し。

PROFILE
運航管理者 航空無線通信士
須藤 好明(すどう よしあき)

1966年東京都墨田区生まれ。2022年2月に航空自衛隊を定年退職(2等空佐)。
現役中は、航空管制官を経て、政府専用機の運航管理者として30か国、約100空港へ国外出張したほか、教官として後進の育成に従事し、隊長として100名余の部下を指揮した。これらの業務経験を活かして、現在は名古屋空港にある航空会社(General Aviation)の運航管理課長として、「共創」(皆で創る魅力的な職場)を目指し、個人及び組織の可能性にチャレンジ中。2022年共創コーチ🄬取得。

今現在のお仕事について、聴かせてください。

 20222月に航空自衛隊を定年退職し、現在名古屋空港にある航空会社に再就職をして勤務しています。前職での航空管制官及び運航管理者としての業務経験を、活かす事ができる、飛行機の運航管理を担当しています。

 運航管理者という仕事は、航空機運航にかかわる気象や航空情報を分析し、最も安全で効率のよい経路・高度を選択し、燃料搭載量を算出、飛行計画を作成、それらを機長にブリーフィングします。その後、目的地に飛行機が到着するまでの運航状況をモニターし、必要な情報を提供する業務で、「地上の機長」とも呼ばれます。

 前職では、政府専用機の運航で、海外30カ国以上、空港数100以上の運航経験があります。現在の職場においては、これらを活かして、どういうルートを組むのか、どの空港に降りられるのか、給油はできるのか、いざという場合は、どこに降りられるのか、もしエンジンが片方ダメになってもここまではいかなければならないとか、ありとあらゆる状況を計算して計画を立てる訳です。結構面白いものです。

 僕は仕事のない休日でも、明日のフライトがあると翌日の天候をどうしてもチェックしてしまうのです。家にいても、天候やこのルートを選択するなら燃料はこれくらい、時間はこのぐらいかかるなと、つい考えてしまいます。もう、趣味ですね。飛行機が大好きなんです。趣味が仕事になっているのは、本当にありがたい事だと思っています。

共創コーチングとの出会い、きっかけはなんだったのでしょうか?

 6年ほど前、日本におけるコーチングの第一人者である伊藤守先生の講演会を、金山で聴講した事がきっかけです。その伊藤守先生の講演会で、共創コーチングスクールのパンフレットを手に入れました。当時の僕は、航空自衛隊の学校で教官職をしており、新人を教育するために、コーチングを活用したら良いのではと、関心を持っていたのです。まずは、僕自身がコーチングを体験し、コーチングスキルを身につけたい、そこから共創コーチングの体験プログラムに参加しました。

 体験プログラムでは、まず「面白そうだ、やってみたい」と感じました。そして、こういう教育を受けた事ないなと。YOKOさんとジョニーさんのお人柄や体験プログラムでの満足度は、大きかったと思います。

実際に、共創コーチングでの学びが始まり、どんなふうに変化していきましたか?

 「新たな世界」に飛び込んだという印象を持ちました。教育とは、先生が教えるものであり、学ぶ者は、どうしても受け身になりやすいと思っていたのです。ところが、初めて聴く「コーチ」という概念に驚きました。コーチとは、スポーツのコーチ、すなわちテクニックや技術を教えてくれるのがコーチだと思っていたからです。だから、ティーチングとコーチングは違うと知った時、「え?何が違うの?」と本当に驚きました。僕が共創コーチングのスクールに学びに入った当時は、その程度のレベルだったのです。

 学びの最初のステップである基礎コースは、リアルでのレッスンでした。当時はまだ、金山にスクールがあり、そこへ通いました。僕にとって、コーチングの学びは、驚きの連続でした。まず、コミュニケーションを円滑にする秘訣、いわゆるテクニックがあると知って驚きました。「傾聴」、「質問」そして「承認」。主にはこの3つですね。テクニックだから、それを習えば良いのだという事に驚いたのです。

 そして、基礎コースで学んでいる時、同じスクール生であるはずなのに、人によって技術の差がある事に気がつきました。同じ事を学んでいるのに、なぜこんなに、最初から出来る人がいるんだろう?と、猛烈に驚きました。それもそのはずです。基礎コースを終えて、養成コースに進んでいる先輩方が、再受講に来られていたのですね。この先輩のようになりたいなあ。目標となる方が、リアルで目前に存在していることが貴重でした。なかなかその先輩のようにはできなくて、自信を失った時もありましたが、休憩時間にフォローしてもらったりして助かりました。

 この金山に集まってくるスクール生は、職業も立場も異なる、波動の高い方ばかりでした。コーチングをマスターし、自分自身の身につけるのだと強い信念を持って、挑まれる方々に圧倒され刺激を受け、僕自身影響されました。リアルでの学びだからこそという良さも、当然ありました。YOKOさんやジョニーさん、スクール生みんなでランチをし、時には懇親会があり、仲間とのコミュニケーションを円滑に図ることができました。

 基礎コースを終えた後、前職で異動があり、コーチングの学びは、一旦数年のブランクを持つ事になりました。養成コースの学びを開始した時には、共創コーチングは完全オンラインレッスンへと変わっていました。オンラインの良さは、時間管理が良い事、ヘッドセットの使用により、集中力が高まる事にあると思います。当時の僕のコーチングが、どうやら違うと気がついたのは、養成コースに入ってからです。「僕がやっていたのは、正確には1on1ではなかった。コンサルみたいになっていたなぁ」と養成コースの学びを深めていく中で、気がついていきました。

コーチングを学んで、まず手始めに、どんなふうに活かしていかれましたか?

 養成コースで学んでいる頃、隊長という役職に就いており、部下100人程を指揮していました。コロナ禍のため、ソーシャルディスタンスを確保する、マスクをしているので表情がわからない、会話も気を使うとなると、隊員同志のコミュニケーションが希薄になっていると感じました。どうやって、部隊を団結したらいいのか。コーチングスキルを伝授して、雰囲気を変えようと考えました。

 コーチングのスキルを学ぶグループレッスンを、管制官だけでなく、器材の整備に就いている人、その他の業務に就いている人も含め、先輩後輩同僚といった垣根を越えて、4~5回行いました。デモや体験を行ったところ、普段話をしない人と話が出来たなど、結構、好評でしたよ。

 また、部下隊員との1on1ミーティングを取り入れました。人財育成には上から下への厳正な指揮や教育も必要ですが、実務訓練中の隊員に、どのような隊員になりたいのか、目指す先輩はいるのか、そして、どのようにすれば目標を達成できるのか、などと質問により考えさせ、気づきを促し、できたことを承認する、という事を行っていきました。特に、指導員等には、その指導の仕方を教育もしました。どうしても、従来型の教育は、上から下へトップダウンでドーンと教えていく事になります。しかし、人財育成の観点からすると、ボトムアップというのでしょうか。その人がその気になって動き、チームが活性化していく事が必要ではないかと思うのです。訓練を受ける側の人を盛り上げていかなくてはいかんよという事を、伝えていました。

 その甲斐あり、上下左右、風通しのよい部隊運営に心がけたところ、ある競技会で優勝という業績をもたらしました。もちろんテクニックもですが、チームワークが抜群に良かったという事です。

隊員の人材育成をしていく中で、一番大切にしていた事はなんでしたか?

 「可能性を信じる」という事でした。訓練生だけでなく、教官、現場の係長、上司も含め、どうありたいのか、どうなりたいのか、そういうイメージをしっかり持つ事が大切だと伝える事を意識していました。3年後、5年後、10年後、あるいは自衛隊を退職する時、どうありたいのかという目標です。質問する事によって、質問を受けた相手はイメージをする、それを教えていく事も心がけていました。

 コーチングを学び、「気づく事」の大切さも考えました。「気づく」ことで、人は成長していきます。どう気づくのか、そこが大事です。今まで日々の勤務では「気づき」は見つからなかったとしても、コーチングを学びスキルやテクニックを知る事で、少し視点を変える、人がやっている事を見て気づく等、そういった着意を持って生活していくと「気づく人」になっていく。短期間で、人財育成していくには、気づきをどう与えていくかも意識しました。

 「気づく人」になっていく事は、大変重要な事なのです。なぜなら、例えば、災害派遣の現場において上官が細かい指示を出すことには限界があります。そこで、派遣された隊員自らが自発的に「何に困っていますか?」と聴き、国民の要望に耳を傾ける事なのです。教科書はないから、やっちゃいけない事以外やればいい。そのためには、「考える事」、そして「何のために何をやるのか」を考え、深い気づきを得る事、深い「気づきを得る事が出来る人」である必要があるのです。

自衛隊を退職されたあと、コーチングをどのように役立てていますか。

 ひとつは、今の会社に再就職するために、ありたい自身、どのように会社や社会に貢献していきたいのか、自身の強み・才能をどうしたら発揮できるのか等、セルフコーチングを行う事で、ソフトランディングできたと思っています。もちろん、それだけではなく、仕事や地域活動を通じて多方面に渡る人脈を築いてきた事も、その理由と考えています。人脈を築くためには、何事にも誠実に対応し、自己開示により、相手から私自身を理解してもらい、受け入れてもらうことが必要です。良好な人間関係の構築が、ミッション成功の礎であるということも悟りました。相手方の話を最後までしっかり聴く事ができるようになったのも、コーチングで学んだ成果だったと思っています。

 ふたつ目に、会社内でコーチングを広めていく活動を開始しようとしています。実は、この春に課長へ昇進し、管理職となりました。社長に「我が社は、中堅社員や若手社員が多い。彼らの可能性を信じ、自信をもって伸び伸び仕事ができたら、会社の将来が楽しみです。人財育成の観点から、コーチングをやらせていただけないか。」と進言しました。社内コーチとして貢献したいと考えています。

 お客様のニーズに的確に応えられる人財の育成及び組織の最適化のため、具体的な行動に向けた準備を実施し、まずは、僕がいる運航部から始めていきます。

 

これからの目標、目指すものがあれば、ぜひお聞かせ下さい。

 航空界は、日進月歩激しい業界です。ドローンや無人航空機(UAV)等、新しい航空機がたくさん出てきています。大阪万博2025年には、空飛ぶタクシーが実用化される。最新技術の導入、世の中の変わり目だと思っています。昔修得した知識、経験及び技能は、時代にそぐわないものは消滅していき、運用規則も絶えず変更または新しく制定されています。常に学習を継続し、頭をバージョンアップする事が必要です。

 そんな時代に、会社がずっと成長していくためには、新たな視点を持ち、新たな事業を作り、業績を上げていく事が必要だと思っています。その可能性を開くのは、中堅社員や若手が元気でいる事だと信じます。コーチングを使って、変化に気づく人を育て、変化に気づいたら、それにどのように適応していくのか、どうすべきか、目標を的確に設定して、みんなで同じ方向にベクトルを合わせていく、そういう会社の雰囲気作りに、少しでも貢献できたらと思っています。

 そして、僕自身の最終目標があります。いずれ、今の会社を去る時が来るでしょう。その時、「須藤さんから学んだコーチング教育が、今の私の基本になっています。」「須藤さん、色々教えてもらいありがとうございました。」と言われて去りたいですね。当然、そこで終わりではなく、さらにその先があり、パイロット養成に特化した大学や専門学校で、コーチングを取り入れた航空法令についての教鞭をとりたいと考えています。

 僕が現在あるのは、たくさんの上司、先輩、部下、後輩等に育てられ、同僚たちとお互いに切磋琢磨してきたからだと感謝しています。そして、航空界の最前線で活躍した経験は、現在プレーイングマネージャーとして実施するだけにとどまらず、「人を育てる」という役割にも活かされなければなりません。多くを学ばせて頂いた、この業界へのいわば「恩返し」です。何事にも冷静沈着に対応できる人財を育成することにより、会社や社会に貢献したい。

 航空界というニッチな分野において、航空管制官出身の運航管理者国家資格を保有する共創コーチ🄬のひとりとして、人財育成に取り組んでいきます。これからも、「誠実に、人脈を大切にして、ありのままの心の声に寄り添っていきたい。」そう願っています。

須藤さんにとっての、コーチングとはどういうものでしょうか?

 僕にとってのコーチングとは、「自分を磨くための術」でもあり、「人を育てるための魔法」ですね。「人を育てる」時は、その人に魔法をかけるようなものというイメージです。なかなかその気にならない人に対して、質問を投げかけたり、可能性を信じる事で、その気になって自ら動いていくという側面が、まさに魔法のようだと。自ら目標に向けて動いて行ける人が増えていけば、日本も安泰かなって思います。