- 受講生インタビュー
オリジナルの「教育の発信者」を目指して。コーチングとインスタグラム。
1992年生まれ、長野県出身。小学校教諭。
これまでに携わった子供、保護者は1000人超。
ユニバーサルデザインを取り入れた教育法を学び、学級担任だけではなく、特別支援コーディネーターも務める。現在はコミュニケーションに困難さがある児童の支援に携わっている。
行動分析学によってコーチングと出会い、2022年に共創コーチ®資格取得。
コーチングで学んだコミュニケーション術は、教育現場や子育てのシーンでも有効だと捉えInstagramにて小学生ママに向けた「後悔しない子育て術」を発信している。
コーチングを学ぶきっかけは何でしたか?
2021年の夏ごろ、自己分析の一つで「行動分析学」というものがあり、そこでの診断結果が「あなたは、コーチングやカウンセリングに向いています」と出た事がきっかけです。教員ではありましたが、それ以外に自分を高めていくものは何か?自分は何がしたいのか?と探していた時期であり、その時の僕は「コーチング」という言葉しか知りませんでした。そこからコーチングについて調べ始めたところ、あるコーチングスクールが体験会をやっている事を見つけ、早速参加する事にしたのです。
そこでわかったのは、僕が今まで学校内でやっていた事と同じだと気が付いた事です。子どもに質問をし、その質問から子どもがどう対応していくのか、どうその子の主体性を伸ばしていくのか。これこそ、普段学校内でやっている事だと思い、これをもっと深めていけば楽しいだろうなと思いました。
共創コーチングで学ぶ事にしたのは、どういった理由からでしたか?
体験会での経験から、コーチングの理解をもっと深めたいと思った僕は、さらに色々なコーチングスクールを調べる事にしました。色々なスクールがありましたけど、ビジネスに特化したところ等、僕には合わないなと。そこで見つけたのが、教育にも強い共創コーチングでした。ここだ!と思いました。体験会をオンラインで受け、これ、面白い!もっとやりたい!という思いに駆られ、2021年の8月から基礎コースを受け、2022年3月に養成コースに入り、10月には共創コーチを取得しました。
共創コーチングでの学びを手に入れて、どう変化していきましたか?
コーチングを学ぶ過程で「自分軸」を見つけられた事。これは、とても価値があると思っています。それまでの僕は、自分に合うものをずっと探し続けていました。お金も稼ぎたい、カッコイイから起業してみようかな?とか。そのためにセミナーに出てみたり、何かの養成に入ってみたりと色々やってみましたが、結局、花開かず。僕は一体、何がしたいんだ?自分の人生って何だろう?と思っていました。
そんな中、コーチングを学び始めて、少しずつ、自分がどんな人間なのかが見えてきたのです。学びでは、受講生同士でバディを組んで相互コーチングを行っていきます。セッションを繰り返す事で、自然と自分自身を見つめるという内省がはじまります。
まず、自分がどういう人間かがわかっていきました。養成コースに入った当初は、自分を下に見られたくないので、「色々な事をしています」と話を盛る事もありました。今思えば、「へぇ~すごいね」って言われたかったんだと思います。
受講生同士の相互コーチングをしていると、僕の違和感を捉えて、「…で、結局どうなの?」とか「え?それ、ほんとなの?」とか、そういった本質的な質問を受けた時に、「実は、そんな事ではないんですけどね…」と、少しずつ自分自身がわかっていきました。コーチングの技術を学びながら、僕自身が成長し、地に足が付いていったという感じです。背伸びしなくなりました。
そして、「もっくんって、つながりとか家族とか、そういう言葉多いね」と言われた事が、自分自身が大切にしている事の再確認になりました。「人と繋がっていたい」「家族的な愛情をかけられる」事が、僕の強みであり大切にしている事だと、改めて気づけました。そうやって、自分が何をしたいのか、自分の殻をどんどん破っていけたと感じています。そして、人とのつながりが弱かったり、貢献出来ていない時は、僕自身の状態が悪い時だとわかるようになりました。
共創コーチング養成コースは、僕にとって「そのままでいいんだよ」というのを学べた場所です。コーチングの技術を学べるだけでなく、相手の本質、パーソナルな部分を見る目を持てるようになる「本質を見る目を養える場所」でもあると思います。
コーチングを、実際どのように活かしているのでしょうか?
一つは、教員同士の横のつながりに役立てています。僕は、いま特別支援教育の場にいて、複数の教員と連携をとりながら子ども達の教育を行っています。となると、教員同士の情報共有やコミュニケーションが大切になります。ここが上手く機能せずエラーが起きている職場では、子ども達も上手に生活出来ていない学級が多いのではと思っています。
例えば、教員同士の会話において。僕は主任という立場にいますが、一方的に話すのではなく、質問をうまく使い、一人の意見でまとまらないように、いろんな人に話を振ったり、要約のスキルを使って一言にまとめていったり、相手を変えようとしないで、まずは自分が変わる事を意識して行動したりなどです。
次に、子どもに対して。僕は、特別支援教育なので子どもと一対一で関わる事が多いです。そこで、週に一度のコーチングセッションだと思って、子どもと一緒に目標を立て、振り返り、次どうする?と話し合ったり、チェックリストを使ったりしています。
目標については、一年という長期的見通しは持てないので、この1学期どうしたいか等ですね。それから、「落ち着きがない感じであるようだけど、どうしたの?」等、教育者としての客観的な視点も入れながら話すようにしています。また、必ず個別の時間では、自分はどういう人間なんだろうという事を定期的にチェックシートを作って、過去との変化を見ながら、なんでここ変わったんだろうね等と振り返る事もやっています。
そうして、子ども達と向き合っていくと変化が現れてきます。例えば、学校に行きたくない楽しくないと話していた子。「なぜ行きたくないの?」「なぜたのしくないの?」と訊いても「なんとなく」という返事が返ってきます。そこを「本当はどうしたいの?」と聴く事で、少しずつ答えられるようになっていったと思います。年齢が低いと抽象的な質問が上手く答えられない事もあるので、そこは選択させる等、配慮しながら行っています。
一対一で会話しながら、何が問題だったんだろうねってアプローチしていくと、子どもが変化していくのは楽しいです。それにより、学校が楽しくなった、授業で発言できるようになった、どんどん明るくなっていく姿を保護者が見て、「子どもが変わりました」と言われるのは嬉しいです。
教育の視点から、インスタで色々な発信をされていますが、きっかけはどんな事だったのでしょうか?
僕は、自分のために自分の命をどう使うかと思っている所があり、教員という肩書を捨てた時に、何が残るんだろうと考えたのがインスタ発信のきっかけです。
教育の現場にいると、保護者からは、「なんか注意してばかりです」「うちの子このままで大丈夫ですかね?」「なんかうちの子いいとこないんですけど」等と聴こえてきます。子どもは子どもで、「どうせ無理だぁ」「怒られてばっかりだぁ」と言っている。
僕は、みんな笑顔で生きていってほしいって願っているんですね。僕が関わったその人や、子どもや大人が、前を向いてポジティブになっていけば、その先にある家庭もよくなる。大人が良くなれば子どもも良くなるし、子どもが良くなれば大人も良くなる、そういう輪が広がっていくと信じています。
そういう子どもたちやお父さんお母さんが、少しでも未来に明るくなっていけるように、そこに貢献していく事が自分の軸だと考えています。ネガティブな言葉がいっぱい聞こえてくる保護者や子どもを肯定したい、少しでも子育てに対してや自信を持てるようなコミュニケーションに特化した発信をしていこうと思うようになりました。
インスタグラムを発信する事で、何かエピソード等ありますか?
インスタグラムの発信は、「小学生3.4年生ママの相談室」というテーマで、2022年8月から始めました。一つ作るのに、大体1時間ぐらいかけます。
共創コーチングで学んだコミュニケーションの技術を、色々な人が学べたらもっと楽に生活できるだろうと思うのです。ストレスをうまく回避しながら、いい関係がつくれるんじゃないか、そういう発信が、僕の目の前にいる保護者達へ届けばいいなと思ってやっています。
そうして発信していたら、教え子の保護者が覚えてくれていて、「木原先生ですよね?息子がちょうど3年生になったので、すごい参考になっています」って連絡頂きました。この事から、自分の発信は届く人には届いているのだなと知りました。
発信をしていて思うのは、コミュニケーションの事は、みなさん知っているようで意外と知らない事が多いなという事です。例えば、共創コーチングで印象的な学びの一つとして、コーチングの上では「変えようとするな、知ろうとせよ」や「答えは相手の中にあるではなく、間にある」という事にすごく感銘を受けて、それさえ一つわかっていれば、子どもとの接し方も変わるし、大人との接し方も変わるだろうなと思っています。
僕が発信しているインスタですが、テーマは「子どもに対しての接し方」が中心です。でも、対大人も同じだなって思います。だから、僕の中での裏テーマは、「旦那さんに対しても、職場の人にでも使えますよ」っていうのが、実はあります。子どもって本質の部分だから、大人になってもそんなに変わらないと思います。子どものタイプを分ける発信もありますけど、大人も分けられると思いますよ。
インスタは、とにかく色々な情報が集まってくるので、集めようと思えばすぐ集められるのですが、お母さん達の悩みの種は変わって行かないのはなぜだろう?と思います。だからこそ、今コーチングって人気なのかなと。僕自身、自分はどうなりたいんだろうって考える時、どんなに考えたところで、答えは無くて、コーチングで人に話したり、実際に考えて動く事で、見えてくるものなのだって、すごく思います。
インスタを見た方から、コーチングセッションを受けたいと言ってきてくれた方もいます。インスタの「いいね」の反応をたくさん貰えたり、友だちから「頑張っているよね」「面白いね」と言われたりすると、思わず「ありがとうございます!」って嬉しくなります。
これから、どんな風になっていきたいと考えていますか?
教育現場でも、発信していく人になろうかなと思っています。もちろん、インスタでも発信しますが、主体的にどんな場所でも「発信者」でいたいなと。
ちょうど共創コーチングで学んでいた時、前の学校で3年生の担任をしていて、「今週の眼鏡の学び」という学級通信の枠を作って色々と発信していたんです。「未完了の話」をかみ砕いて掲載したところ、ある保護者から「私、すごい未完了でした。すごく学びになっています。」という言葉を頂きました。受け取り手全員にわかってもらおうと発信するのではなく、必要な人に、ひとりに届けば良いと思って発信する事が大事なのだと気が付きました。
これが出来るなら、学校の先生方にもできるんじゃないかと思います。本年度は異動して2年目になるので、これから自分らしさをどんどん出していこう、そういう発信もやって行こうかなと思います。
それから、最近では、まったく教育と関係ない事を学びたいと思っています。何を学ぶかは、まだ見つかってないですけど(笑)。世の中に出ているデザインがどう関わっているのかとか、色彩学とか。デザイナーになりたいというわけではなく、そういう学びを、教育現場や発信に紐づけて、活かしたいと思っています。デザインって同じものがないですよね。きっと、「オリジナルの教員像を作っていけたらいいなぁ」と思っているんだと思います。
僕は、ありがたい事に学級担任や特別支援教育等と、色々な経験をさせてもらえています。そういう色々な要素を取り入れた先生は、少ないじゃないかと思います。なんか粘土みたいに、柔軟に様々な要素を取り入れて、作っていく「オリジナルの教育者」。
そして確実に言える事は「発信者」である事、たぶんその「自分の軸」はブレていないと思っています。多くの「保護者や子どもに貢献していきたい」というのは、変わらないです。だから、教員というより「オリジナルの教育の発信者」になっていきたいなと思います。
最後に、あなたにとってのコーチングとは?
コーチングとは、「本質」ですかね。自分の本質も見つめる事になるし、見つめられるし、相手の本質にも迫れるもの。本質とは、その人の本当の自分とか、本当の在り方とか、本当のなり方とか。そういうところに辿り着くものと思っています。
普通の会話では、おそらくそこまでたどり着けないと思っています。コーチングは、「本質へたどり着く切符」。切符みたいなモノになるのかなと思います。切符を持っていても、本質に辿り着きたくなかったら、降りればいいのだから。それを使うか使わないかは、その人の自由だったりしますね。持っている事で、本質の場所に行ける。自分で言っておきながら、納得しました(笑)。
今日、ずっと話をさせて頂いて、僕は教育以外に手を出してきた過去もありましたけど、好きなことは「教育なんだ」という事を、改めて感じました。