• 受講生インタビュー

私にとってのコーチングを例えるなら、「一杯の水」。 私を覚醒させ、整えてくれる。

PROFILE
一般財団法人日本アントレプレナー学会評議員
坂本路子(さかもと みちこ)

福岡生まれの長崎育ち。起業家の両親のもとホテル、飲食、不動産、サロン、アミューズメント施設等の数々の経営に携わり、起業〜売却モデルの経験を積む。1991-1992念願であったロンドンのビジネススクールに留学し帰国後は家業とコンサルタント独立をかけもちスタート。中心となる強みは、成長発達にレベルを重視するティール組織開発とシステム化。2015-2019ヨーロッパ移住後、現在は英、日、米の3拠点で海外パートナー企業と活動する。海外国内クライアントに向けて世界基準の情報を提供する海外ビジネスコーチでもある。
共創コーチ®︎

今どのようなお仕事をされているのでしょうか?

 私は、一般財団法人日本アントレプレナー学会の評議員をしております。理事職から始まり10年程になります。わが社の中心となる業務内容は、「経営の仕組み化」。「人依存から仕組み依存の経営へ」を掲げて、会社全体を生き物として捉え、育て、社長やそこで働く人に依存せず、会社が成長していけるように、仕組みで解決するという事をお伝えしています。

「経営の仕組み化」について詳しく教えてください。

 この「経営の仕組み化」という考え方は、アメリカが本場で、50年以上前からあるものです。ご存じの通り、アメリカという国は様々な人種、例えば言語、歴史、スキンカラーといった多様な背景を持つ人々で構成されています。この国が栄えていくためには、どんな人でも出来るように仕組み化をする事が必要であり、それがあるからこそ成り立ってきたのです。「誰でも出来るように作る」というのが得意なんですね。
この技術を体系化し導入した点において、我が社は第一人者になるかと思います。


 この仕組み化の考え方がユニークなのは「人に業務を付けない」という事です。その人にしか出来ない仕事で成り立ち、構成される企業は、やはりリスクがあります。その方が辞められたら、何かあったら、業務はストップしてしまうという事があり得るわけですね。となると、経営にもかかわるし、企業の存続にも影響が出る可能性も出てきます。

 最近では、「ジョブ型雇用」も浸透してきましたが、そのジョブ型雇用を円滑に行えるようにするための仕組みと思っていただけたら良いでしょうか。

 日本は、「人と仕事」を結びつけて職人が育つ風土があります。もちろん、職人技は職人技として残していかなければいけないのですが、それだけでは、この世の中の急速な変化にビジネスとして対応できないという事も出てきます。国際化を日本も図られてきた事から、こうした仕組み化をはじめとする海外の技術や考え方も取り入れていかなければ、対抗していけないわけです。

第一人者ということですが、どのように導入されていったのでしょうか?

 仕組み経営は、2012年に本格的にスタートさせているんですが、全く新しい考え方ですので、開拓することから始めました。初めは、全国にセミナーを開いて伝えていくという事からです。

 この時のセミナーのキャッチコピーは、「社長が3ヵ月不在でも、会社が成長していく!」といったセンセーショナルなものでした。私たちの意気込みは、少し大げさですが日本の中小企業に「社長を不在にする」というムーブメントを起こそうというくらいの熱量で動いていました。

 当時、日本に無いコンセプトでしたので、風当りも相当に強かったですね。社長や役員といった能力のある方ばかり、ご自分の腕1本で会社を背負ってきた社長、管理職の方々は、自負心やプライドもあります。そんな多くの方に参加いただいたセミナーで、会場の空気も重く厚くてですね。セミナーを受けていた社長が、バァーン!!って机を叩いて立ち上がって、「ふざけんな!」って言って帰られたりとか。本当にいらっしゃるんですよ。社長を誰でもできるようにしちゃったら、個人の職人技がなくなっちゃうだろう!とか。色々な社長に、むちゃくちゃ怒鳴られました。おかげで、かなり勉強させていただき、度胸もつけさせていただいて、今の私があります(笑)。

 今でこそ、こういったお話をすると理解していただけるようになってきていますが、社長がいなくても会社が回るように作れたら、仮に何かが起こったとしても、会社は大丈夫だという状態が作れたら、幸せじゃないですか?というお話から始めます。社長はトッププレイヤーなんですよね。営業から、時に職人もと、全ての業務を、走り回ってこなしてしまう。ご自分の時間って、1時間ありますか?まずは、その1時間を作るところから、始めませんか?というアプローチをすることもあります。

コーチングを学ぼうと思ったきっかけは、どんな事からなのでしょうか?

 その「経営の仕組み化」を広げていくためには、自社もそれが出来ている必要があります。発足当時は、財団の代表と私の二人が中心となり、「仕組み経営」として広めていましたが、私たち以外の人も出来るように作りました。「仕組み経営コーチング」というメソッドを開発して、このシステムとそれの進捗を「伴走するためのコーチ」を育成トレーニングによりたくさんの「仕組み経営コーチ」を排出できるようになりました。今は彼らがすべての業務を行っているという状態になっています。

 ここでいう「コーチング」とは、共創コーチングのそれとは違い、「経営の仕組み化」が自動的にできるシステムを指しています。動画やラーニングサイト、テキスト、ワークシートなど、それらを完了させると自動的に会社を仕組み化出来るもの。さらに、それの進捗を伴走する「仕組み経営コーチ」という人々がいます。

 この「仕組み経営コーチ」を育てるポジションのリーダー達に、コーチングでコミュニケーションを取りたいと思った事がきっかけです。コーチングに関して、様々な書物を読んだりしましたが、彼らの持っているポテンシャルを伸ばすためには、きちんとコーチングを学ぶ必要がある、ここが自社に欠けていると思ったんですね。

 そして二つ目。コーチングだけでなく、メンタリング、コンサルティングもしているイギリスやアメリカの提携会社があります。ここには、ICFのリーダー、大学クラスの教授など、錚々たるメンバーがいらして、こういった方とやり取りをする時に、円滑なコミュニケーションやビジネス取引をしたいと考え、きちんとコーチングを学ぼうと思いました。

 さらに3つ目。発達障害のある二人の息子のためです。今は成人して、自分たちなりにやっていますが、コーチングの手法で接する事で、ティーンネイジャーになった時、彼らの力を引き出せるんじゃないか、彼らが就職していくであろうその職場にもコーチングは絶対入っているから、今から鍛えていておいて損はないと思ったのです。

コーチングを学ぼうとした時、共創コーチングを選んだのはどういった理由からですか?

 たくさんのコーチング会社のサイトを調べました。2021年のコロナ禍で、自社が100%リモートに対応出来ているのに、100%リモートに対応できていない企業は嫌だと思っていました。リモート対応と謳っていても、何度かそこへ行かなければならないという所はいくつかありました。これは本当におこがましい事ですが、組織が全然革新されていないと取ったんですよね。でも1社だけ、100%リモートという企業があったんです。あ、すごいビジネスセンスある!ビビビっと来て、ワクワクしました。それが、共創コーチングだったんです。

 そこからは、YOKOさんとジョニーさんのお人柄に惹かれていきました。どうしてもリモートとなると、ビジネスにしても、人とのつながりが希薄になっていきます。しかし、そこが共創コーチングでは違っていて、リモートでありながらも、動画から伝わってくる人間性、安心感、信頼感がありました。この方たちから学びたい!そして、YOKOさんがビジネス畑、ジョニーさんが教育畑と、お二人の得意分野に関してもお聞きしたい!と思いました。この方たちしかいないじゃん!となり、もう何も悩みませんでした。

 そこから、共創コーチングの基礎コースからグループコーチングまですべてを、一気に申込みました。会社に相談したところ、代表も快諾してくれて、資金面でもバックアップしてくれる事になり、とんとん拍子に事が運びました。これはすごい出会いであったし、本当に良かったと、今も思い続けています。

共創コーチングの学びを、今どのように活用していますか?

 一つは、社内に向けて。組織メンバーに対して、定期的なコーチングを行っています。部下ではなく各理事に対して、数カ月おきにセッションを行っている事、必要な時に思考の整理としても、セッションを使ってもらっています。理事は優秀な方が多いので、アイデアをたくさん持っていらっしゃるんですね。そのアイデアをビジネスとして構築し、すぐにでも走り出したいといった時など、青写真を描いたり、アクションを作成したりと、そういう使い方をされることが多いです。

 また、グループコーチングの技術を、理事会などのファシリテートをする場で使っています。YOKOさんやジョニーさんがやられているように、みなさんの発言を拾っていく、スポットライトを当てて回していく、そんな感じで進めています。


 二つ目は、社外に向けて。先ほど申し上げた「仕組み経営」は、他の方が育ったので、私は「仕組み経営」のトレーナーを卒業して、「ティール組織」へ移行させてもらっています。「ティール組織」はヨーロッパが本場で、隣り合う国々という多様な風土で生まれたものですので、人があらゆる価値観の違いを乗り越え各自が自然に求められるポジションにつき自分らしく活躍する為に人間の成長発達段階に合わせて組織変容を促し自律型の組織を目指します。


 2015年にヨーロッパへ移住した時に、この「ティール組織」という考え方に出会い衝撃を受けて、日本に持っていきたい!と思いました。そこで、この「ティール組織」の手法を使って組織改革をするというポジションに、今は移行させていただいています。

 この「ティール組織」のクライアントは、ほとんどが管理職の方ですが、この方々と対話する時に、コーチングの技術を使っています。組織改革がテーマなので、企業文化を構築したいなど、数値化しにくいトピックや組織からのアイデアを引き出したい、ゴールを明確にしていく、アクションプランを立てていくなどといった時に、非常に役立っています。

 そして三つ目に、プライベートでも活用しています。私の息子たちが、障害がありつつも一般企業に就職が出来たという事で、ボランティアで、発達障害のあるお子様をお持ちの保護者相談会を開いています。当時者本人より、それを支える家族や保護者のお気持ちが痛いほどわかるので、そこを支えていきたいなぁという思いで行っています。私の空いている時間内だけですが、コーチング的にかかわる事で、相談者のおとうさんやおかあさんが、「こうしたらいいんじゃないか」と、はっと気づかれる瞬間があります。これが最近、とてもハマってしまっていて、私の喜びになっています。答えが、人の数だけある。素晴らしいなと思っています。

 もちろん、カウンセリング的な関わりも必要です。ただ寄り添って、ここに居るよという場面。それとコーチングの合わせ技は、特にボランティアにおいては、すごく効果を発揮していると思います。これは、ジョニーさんYOKOさんから、メンタリング、ティーチング、カウンセリングなど、それらの違いを明確に学ぶ事が出来た事が大きいです。着地点がどこなのか、自分の中でスイッチングできるようになりました。

ふんだんにコーチングを使われていますが、共創コーチングの学びの中で印象深いものはどんな事でしょうか?

 実は、共創コーチングで学んでいる時期、私は洋書の翻訳作業という仕事に取り掛かっていました。イギリス、アメリカの大学機関で教科書として使われているリーダーシップの本です。2022年の秋に「エゴを超えたリーダーシップ」という電子書籍をリリースする事ができました。産みの苦しみを味わい、共創コーチングで学んだセルフコーチングを使って、達成したひとつの成果物です。質問の方向性の十字の図を頭において、自分自身に質問を投げかけていました。

 例えば、この部分の翻訳がすごく難しい、てこずるという時。YOKOさんがよく投げかけてくれるような質問だと「頼りになる人いない?」「お助けカード、誰か出せる人いないかな?」とか、ジョニーさんだと「そういう同じような事をやっている他の人っている?」「もしそれがリリースできたらどうなるの?」など。

 誰も教えてくれる人がいない、自分たちから生みださなきゃいけない、まさに手探り状態です。手探りだからこそ、コーチングじゃないとやれなかったと思うんです。答えが無い、自分自身がやった事のない新しいチャレンジングな活動に関しては、コーチングはこんなに威力があるんだと知りました。この経験は、記憶にずっと残ると思います。

 

これからどのようになっていきたいのでしょうか?

 今お話した「エゴを超えたリーダーシップ」という書籍は、自分の私利私欲を超えたところで、会社や社会、地球全体のために意志決定をしていけるリーダーを作りましょう、それが、私たちが生き残っていく唯一の方法ですという内容のハウツー本なのです。これを出版した事で、今、私は「ティール組織」から「リーダーシップ」というところへ片足を入れようとしています。世界のビジネスパーソンと戦い共存していくリーダーや若い世代へ、次世代型のリーダーシップを広める活動に力を入れていきたいと思っています。

 現状は、リーダーシップとコーチングを融合したプログラム開発の段階であり、またコンテンツだけでなく、今後トレーニングも入ってきますので、ここにもふんだんにコーチングを取りいれたいと構想しています。

 そして、長期としてぼんやり見えているのが、ボランティア活動の延長上にある夢があります。障害のある方たちの「就労トレーニングセンター」のようなものに携わりたい。作業所というレベルを脱して、成長してきている方のセンターとして、コーチングを使って、ビジネススキルを習得するためのトレーニング出来る人になりたいなぁと思っています。

 自分がセンターを構築出来たら、バンザーイと言って死ねるくらいの夢です。自分でという思いもありましたが、長期で考えた時、そうそう強靭な体力の持ち主ではないので、誰かと一緒にやれたらいいなと。補佐役のような形で関われたらいいなと思っています。

最後に、あなたにとってのコーチングとは、どういうものでしょうか?

 朝目覚めた時に飲む、「一杯の水」というイメージです。きゅうっと飲み干す、美味しい水。目覚めの時のピッと切り替えてくれるような、自分をクリアにしてくれるような、デトックスもしてくれるような、はっとさせられたりもするし、リラックスもする、そういう生活に無くてはならないもの。

 子どもの事で、ちょっとヒートアップしたりする時なども、水を飲むと切り替わったりしますね。ジュースでも、お茶でも、コーヒーでもダメ、やっぱり水なんです。

 私にとってのコーチングとは、「一杯の美味しい水」というのが、不思議としっくりきています。