• 受講生インタビュー

コーチングが日常に溶け込む事を目指して。 「街のコーチング屋さん」をせっせ、せっせと営む日々。

PROFILE
熊澤 典子(くまざわのりこ)

副業専門コーチ/共創コーチ®/
国際コーチング連盟認定コーチ(ACC)
Points of you ® Practitioner /
アートマインド®advancedコーチ/
Art Director / 交流分析療法士

広告業界にて、25年以上のキャリアを持つ。外資系広告代理店クリエイティブ局のアートディレクターとして、広告やキャンペーンの担当チームをまとめてきた。
その後の10年間を、全国に店舗を持つ一般企業の販促企画部をゼロから1人で立ち上げ、各営業所に販促担当者を置き、部署を拡大。「待ちの体制」から「仕掛ける体制」へ販促展開ができるような体制作りに貢献。

退職後、プロコーチとして独立 TEN.carat主宰
これから副業をする人や市民活動に力をいれている人のためのコーチングセッションを中心に活動。また、共創コーチングスクール運営のサポートも行っている。

コーチングを学ぼうと思ったきっかけを聴かせてください。

 2015年に、副業として整理収納アドバイザー1級の資格を取った事、これがきっかけになります。実は、お客様を持って「整理収納」を仕事にするには、コーチングのスキルが必要になるのです。「モノを整理する」「片付ける」時、人は「モノ」に色々な思いや価値があります。例えば、そのモノにいくらかかったとか、誰から貰ったとか、色々な思いがあって、そう簡単に手放せないのです。どんな暮らしがしたいのか、どんな状態を目指したいのか、何のために整理収納をしたいのか、お客様の思いをどれだけ引き出して、話を聴きながら、整理をしていくという伴走が出来ないと、整理収納は進まないという事がわかりました。

 一番初めは、整理収納アドバイザーのためにコーチングを学び始めたのです。「目標」があって、「現状」があり、どう進めていくのか、お客様ご自身で整理し収納するという行動を伴走する、まさしくコーチングです。

 ところが、私自身あまりお片付けが好きじゃなくて(笑)。整理収納というよりも、「人」にフォーカスして、その人のやりたい事や思考の整理にコーチングを使う方が面白いと思うようになっていきました。

共創コーチングを知るきっかけは、何だったのでしょうか?

 その頃、長く務めた広告代理店を辞めて、全国に300店ほど店舗を展開している中小企業に勤めていました。販促に力を入れたいという事で、ゼロから販促企画部を立ち上げるために入社した会社です。

 ここは同族会社で、私の直属の上司は会長夫人でした。どんな会社でもあると思いますが、社内は混沌としていました。社長&会長側、会長夫人側、それだけにとどまらず、社内での役職や立場をより有利に、より発言権を強めたいと考える人達があちこちに居て、対立しているような状態でした。社内の空気は殺伐としていて、疲弊しきっていました。

 私の上司は、いつも社員の暮らしぶりが良くなるように、社内の改革や報酬について頭を悩ませていらっしゃいました。その上司の悩みをいつもそばで聴き、どうしたら会社がより良くなるのだろうか、コーポレートコーチングを導入したら、変化が起きるんじゃないか、私はそんな事を考えるようになっていきました。

 そんな時に、YOKOさんの出版記念講演が都内で行われる事を、整理収納アドバイザーの仲間が教えてくれました。これはチャンスが巡ってきたと思い、すぐに講演の申込をして聴きに行きました。これが、YOKOさんとジョニーさんとの出会いであり、共創コーチングを知るきっかけになります。

 その講演の中で、YOKOさんが参加者の方からの質問に答える場面がありました。その時に投げかけた「問い」は、「その方は、その時どう感じていたのでしょうか?」というものでした。今でも覚えていますが、その問いにとても共感しました。あ、この人の問いをもっと聴きたい、知りたい。講演終了後に名刺交換をさせていただき、後日、上司と共にYOKOさんとの面談をお願いしました。ここから、私は共創コーチングで学びを開始していくのです。

共創コーチングでの学びを、どのように活かしていきましたか?

 社内にコーチングを導入しようと、上司や人事部に相談したり、営業部や会長にも話を持っていきましたが、なかなか受け入れられませんでした。「コーチングは良いと思うけど、でもねぇ…」と言葉を濁されて終わりです。私は会長夫人と一枚岩のように見られている事もあり、社内の風当りは相当に強くありました。

 それでも、社内の風通しを良くするにはどうしたらいいのか、私の販促企画という職域の中で、コーチングを機能させることはできないかと、日々考えていました。その甲斐あってか、販促会議をグループコーチングを実践する場にすることができるようになっていきました。会議の参加者全員が同じ目的のもと、各々が出来る事は何か、会社をよりよくする事は何があるのか、それを話す場です。

 結果的には、会社組織そのものを改善する事はできませんでしたが、少しずつ関係性を作る事ができるようになり、実際、電話で相談をしてくるメンバーが出て来たり、現場が主体的に考えた販促のアイデアを基に、本部が協力したりと、変化は生まれてきていました。一人で始めた販促企画部ですが、全国の営業所に販促企画担当者を置けるようになり、小さな歩みですが、会社に貢献できたのではと思っています。

プロコーチとして独立するに至った経緯は、どのようなものだったのでしょうか?

 販促企画部という部署に身を置きながら、1on1のコーチングの練習相手になってくれる人を、社内で募集していました。それを面白く思わない人が少なからずいて、結果的に私は会社を辞める事にしました。

 夫に、「会社を辞めようと思うんだけど、どうかな?」と相談すると、「辞めたらいいんじゃない。やりたい事をやったらいいよ」と、即答してくれました。これには、本当に感謝しています。会社の組織そのものを改善する事は出来ませんでしたが、本当に様々な経験をさせてくれた会社であり、今でも、感謝してもしきれない人生のターニングポイントにある会社だったと思っています。

 後先考えずに辞めたので、さて、これからどうしよう?と思いました。コロナが始まって、リモートワークを導入する企業が増えていた頃の事、養成コースの近況報告で「会社辞めました!」と言ったら、みんなびっくりしていました。YOKOさん曰く、その時の私は、随分とすっきりした表情をしていたそうです(笑)。

 何を仕事にしていこうか?と考えた時、プロコーチで仕事をしていきたい。そのためにはどうしたらいいのだろうか?と、企業に飛び込み営業のような事をしたり、電話をしてPRをしたり等、チャレンジしましたが厳しいものがありました。当たり前といえば当たり前です。プロコーチを目指すために私が出来る事は、何があるのだろう?とセッションで話すうちに、気が付いた事がありました。それは、「人」「人」「人」と、私は「人と出会いたい」という事をこの1年程、ずっとマイコーチに話していたのです。そして、コーポレートコーチングより、パーソナルコーチングをやりたいのだという事にも気が付いていきました。「人と出会うには、どうしたらいいのか?」これが、私の課題になりやりたい事になっていきました。

「人と出会う事」が課題だとわかってから、どのように動いていったのでしょうか?

 私は社会人になってからというもの、ずっと東京で働いていたので、友人や知人はみな都内の人でした。コーチング関係では、全国に仲間はいましたが、地元の松戸市には、知り合いがほとんどいない状態だったのです。オンラインを使う事も考えましたが、あまりピンと来ず、リアルで会える方法を探すことにしました。

 人と出会うにはどうするのか?と考え続け、はたと思いだした人がいました。地元松戸市のNPO法人の代表で、ママの子育てや仕事を支援する大きな団体を設立したYさんという方です。私が整理収納アドバイザーを取った時、この団体に登録したのを思い出したのです。そうだ、あの人に会いに行こう!キャリアコンサルタントの資格も持っているその代表に連絡をとり、面談してもらう事にしました。

 久しぶりに会ったYさんに「地元に知り合いがいない。コーチングで、いろんな人のサポートをしたい。」と滔々と語ったところ、「だったら、Nさんに会いに行きなよ」と言われました。「私に何かやれることはありませんか?私が手伝えることはありませんか?」と言って、その人のところに行きなさいと教えてくれました。

 このNさんは、今も本当にお世話になっている方で、私の家から歩いて数分のところにある古民家と蔵をリノベーションして、レンタルスペースとギャラリーカフェに改装して運営しているオーナーです。ジャズライブ、藍染ワークショップ、ワンディカフェ、ギャラリーといった様々なイベントをやっている場所で、私自身もイベントに参加者として訪れた事のある場所。「こんな素敵な場所で、いつか講座をやってみたいなぁ」と憧れの所でした。

 GW明けにアポなしで、Nさんの居るカフェに行きました。珍しく、この時はお客様が誰も居らず、オーナーのNさんと二人になれました。「Yさんからここを紹介されました。地元に知り合いがいない。私に何か出来る事はありませんか?コーチングで人のサポートをしていきたいのです。」と、夢を熱く語ると、「じゃあ、Cさんを紹介するよ。いるかな?忙しい人だからどうだろう?」と言って、その場で電話を掛けてくれました。

 すると、これもたまたま運よくCさんが電話口に出て、「今からもし来てくれるんだったら、話聴けるけど」と言うので、私は車を飛ばして、30分後にはCさんの目の前に立っていました。

 このCさんも、今本当にお世話になっている仲間の一人なのですが、「人の輪を広げたい、コーチングをやっていきたい」と、ここでも語ると、「ちょうど、これから募集を掛けるものがあるけど、それがいいんじゃないかな?」と紹介してくれたのが、地域に貢献する市民活動の場を創出する「まつど地域活躍塾」でした。この活躍塾に参加したことで、出会いがどんどん増え、私自身の活動が一気に動き始めました。

 この「活躍塾」には、やりたい事を持っている人達がたくさんいました。利益追求のために何かをするのではなく、自分がやりたい事をやって、それで誰かが幸せになったり、喜んだりするなら、そっちのほうがいいよねっていう方たち。利益よりも、感謝や人のつながりという部分に重きを置く活動者。全く利益を追求しない、無償というわけではないけれど、そんな心意気で活動するのは面白いな、市民活動とはそういうものなのか!と、すごくリスペクトされました。

人との出会いを手に入れて、今どのような活動をされているのでしょうか?

 今、私は「副業専門コーチ」としてコーチングセッションの提供と、市民活動として「街のコーチング屋さん」という任意団体を、活躍塾のメンバー二人と共に2021年の81日に立ち上げて活動しています。

 本業は、コーチングセッションです。ありがたい事に月に10人弱ほどのクライアントを持ってやっています。セッションを止める方がいれば、ご紹介を通して新しく来てくださる方もいて、毎日色々な人に感謝しています。

 私はプロコーチとして活動する傍ら、地域に貢献する市民活動にも力をいれています。本業を持ちつつ何かしたい方を支援するという方針で、コーチングセッションを行っています。実際、副業や市民活動に興味を持つ人が増えてきています。何かしたいけど何ができるかわからないという方、具体的な副業を持って、それが円滑に回っていくように支援してほしいという方、本業の傍ら市民活動をしたいという方、市民活動を運営していく中で起こる様々な課題にたいして支援してほしいという方、そんな方たちにセッションを提供しています。

 また、「街のコーチング屋さん」では、「コーチングのある暮らしが、当たり前の世の中に」というビジョンを掲げて、「学ぶ会」と「お話会」というのを毎月開催しています。

 私がコロナに罹患した1回だけ開催を断念した以外、「学ぶ会」はコンスタントに開催出来ています。3部構成で、気軽にコーチングスキルの基本を知る事が出来る講座です。受講くださる方の課題や悩みを軸に講座を進行するので、毎回発見があり、リピートしてくださる方もいます。

 「お話会」は、コーチングの敷居を低くする事を目標にした活動です。「街のコーチング屋さん」という名前を売る、「コーチング」という言葉を知ってもらう、参加しやすい団体と感じてもらう事を目指しています。ゼンタングルというパターンアートを描くワークショップ、Points of you®というPhotoカードを使ったセッションなど、手を使ったり内省を促したりと、自分と向き合う時間を提供する会になっています。

 こんな活動をしていると、他の市民団体から声が掛かります。行政のイベントに一緒に出ないか、運営に協力してほしいなど。そんな時は「街のコーチング屋さん」という名前を出すチャンスと考え、出来るだけ協力をします。「子ども食堂」「クラフトひろば」といった居場所を提供する運営にも参加して、人のつながりを作っています。

他に、どんな活動をされているのでしょうか?

 「街のコーチング屋さん」の活動をする傍ら「コミュニケーションスキルが身につくカードゲームを作りたい」というプロジェクトも動かしています。これは、2021年の12月に松戸市が開催している「みらいカイギ2021」で「街のコーチング屋さん」の提案として発表をし、採択されたプロジェクトです。今年2年目に突入しました。遊びながら「コーチングスキルを知る」事のできるカードゲームを目指しています。今運営メンバーは、私含め8名。3月末に、小学生向けの「リフレーミングかるた」を作成し、松戸市のイベントに出展します。また、今年は大学のゼミ生とコラボしながら、共同開発していこうと思っています。

 それから、クライアントを複数のコーチがエールを送る場としてオンラインスペースを作ろうとしています。これは私が作った造語ですが、キーワードは「疑似未来」。「空想スピーチと名刺~未来からのエール~」という名称で、開発中です。ご紹介できるようになったら、ぜひ共創コーチのみなさんに、楽しんでいただけたら嬉しいなぁと思っています。もし、運営やコーチとしての参加に興味ありましたら、お声がけください。

 そして「目隠しアート鑑賞会」というワークを開発。耳だけでアートを鑑賞するものです。耳から入ってくる情報を基に、想像力を膨らませたり、他の参加者が感じた事と何が違うのか、自分のフィルターを知ったり、様々な発見を得るワークになっていると思います。これを、今年はあちこちで動かしていこうと画策しています。

色々な活動をされているのですが、その発想はどこから来ているのでしょうか?

 私は、子どもの頃から「創造」「想像」する事、それを伝えたり、周りに影響を与えたりする事が好きでした。美術系の大学を卒業後広告業界へ就職したのも、その才能を活かせると考えたからです。当時、広告やコマーシャルが、世の中の流行を作る時代でした。世の中に「影響」を与える事をしたい、それが動機でした。

 私の価値は、「創造」「影響」「伝達」の3つ。この才能を、「日常にコーチングを取り入れる価値」を広める事に、力を発揮していきたいと思っています。そして、ストレングスファインダーでは「個別化」という強みもあり、個々に合わせる事も出来る。コーチングセッションは、その最たるものと思います。だからこそ、今の私が居る。

 こうして振り返ると、色々な事をしてきましたが、無駄なことは一つもなく、すべては必然なんだと思えています。そして、心の底から感謝の念をもって生きています。毎日楽しい。毎日感謝。たくさんの人に助けられ、本当に有難く生きています。