• 受講生インタビュー

チームの傍に、たまにつぶやく大仏で在りたい。

PROFILE
矢口 博之(やぐち ひろゆき)

理工系大学卒業後、輸送用機器メーカー研究所で研究開発業務に携わる。18年の研究開発業務の後、研究開発を支援する立場となり、2012 年からは人財育成専任者として、ひと・組織を支援している。2015年、業務をしている中でコーチングと出会い、支援者としての天命を感じる。研究開発エンジニア魂を持ちつつ、それぞれの持つ「強み」に合わせた形で人財育成、支援を行っている。
2020年、コロナ禍に入り、『人のしあわせってなんだろう? 』という問いに興味関心を持ち、“ウェルビーイング“”しあわせ“というキーワードで学びをはじめている。
“コーチングってなんのためにあるのか?“”コーチングがうまくいった先にあるものはなにか?”といった問いについて考え続けている。
■資格:
共創コーチ®
一般社団法人コーチングプラットフォーム認定コーチ
Points of You® Explorer認定
ウェルビーイングダイアログカード認定ファシリテーター
アチーバスジャパン認定トレーナ

普段のお仕事について教えてください。

  僕は、製造業の研究所で働いています。エンジニアを18年やり、その後、研究開発を支援する仕事を経て、現在は研究開発部門内の人財育成を専任で10年、トータル40年以上研究所に勤めています。

コーチングとは、どのようにして出会ったのでしょうか?

 2015年頃、ストレングスファインダー®︎(当時の名称)の講座に行ったのが出会いです。この時、コーチングというものがあるのだと知りました。この講座に参加して驚いたのは、「自分と人は、こんなに違うモノなんだ」という事です。

 自分が良いと思っている事/自分の当たり前は、他人にも良いもの/他人の当たり前だと思っていました。例えば仕事のやり方など、この方法が良い、これしかないというように、人に押し付けようとしていたなと気が付きました。自分が出来る事は、他の人も出来るはずだと。実はそうではなく、自分にとっては良い事でも、他の人にとって良い事かどうかは、別問題だという事を知って、衝撃を受けました。

 そして、あるコーチングスクールで自分自身を整えるために自己基盤について学び始めました。 

 

自分自身を整えるために学び始めたコーチングですが、共創コーチングで学ぶきっかけは何だったのでしょうか?

  実は、その当時から国際コーチ連盟日本支部(当時の名称)のHPで、ACTP*現在はレベル2と呼称)の認定を出しているコーチングスクールとして「共創コーチング」を知っていました。そしてカリキュラムに含まれている「グループコーチング」が気になっていました。ただ、名古屋での開催になるので、さすがに遠くて行かれなかったというのが本音です。それが、コロナがきっかけで、オンラインで受講できるようになった事が、大きな理由です。

 さらに、会社で研修費用の支援が始まりました。もちろん費用の全額ではありませんが、一部負担してくれる事になったので、受講しやすくなりました。

 20208月から、リレーションシップの基礎コースから開始。初めは、グループコーチングだけ受講しようと思っていたんですが、会社からの支援もあるし、全部の講座を受ければ、ACTPICFの資格試験)も日本語で受けられる、英訳しなくてよい事がわかり、養成コースを経て共創コーチ®資格保持者になり、グループコーチングの講座を修了し、今はACTP目指して日夜セッションと録音とログ起こしに励んでいます。

共創コーチングの学びは、いかがでしたか?

  コロナ禍以前からオンライン化を考えていたというだけあり、共創コーチングは、オンラインで学ぶ講座として、すごく質の高いものを提供していると思いました。基礎コースは、1ヶ月間毎週木曜日に2時間とピアトレを1セットで、一つのコースが完了する。それを補完する形で、ラーニングシステムでの動画があり、それが、非常にうまく機能して学びやすいと思っていました。少人数制というのも、ポイント高いと思います。

 それと、基礎コースも養成コースもですが、講座終了後の「YOKOの部屋」ってあるじゃないですか。あれが、やっぱり良いと思います。講座だけでプチッと終わってしまうと、他の受講生やコーチの二人と話す機会が限られてしまいます。受講生全員が残っているわけではないけれど、残った人と話が出来るあの時間は、貴重だと思いました。

 養成コースのカリキュラムの中には、バディを組んで進んでいくという仕組みがあります。目的は違っても、コーチングを使えるようになりたいという共通の目標がある二人が、互いにセッションをし、互いをリスペクトしあいながら、一定期間を継続して関わる。今思うと、あそこから「共創」が始まっていたのかなという気がします。

 そして、最後に学んだグループコーチングは、衝撃的でした!ファシリテーションとも違う。僕の思い込みなのかもしれないですが、セッション中は、全員が全員、同じぐらいの量を話すようにしようという思いがありました。ところが、自分が話さなくても、聴いて学ぶ人もいる。それを理解すると、テーマについて話している人と、その周りの人との関わりをどう作っていくのか、それがポイントなんだとわかりました。共創コーチングのスクールの中で、YOKOさん達はこれをずっとやっていたんだと気が付いた時は、自然にやられているところが特にすごい!って驚きました。難しいですね。

コーチングを学ぶ前と学んでから、どのような変化がありましたか?

  学ぶ前は、自分自身の感情に意識を向ける、自分の内面を考えるという事は、まったくした事がありませんでした。自分自身の事について考えるようになったというのが、非常に大きいです。

 コーチングを受けて気づいた事の一つに、「自分をごまかしている」というものがありました。具体的にいうと、僕は「家族が大事だ」と言っているにもかかわらず、「本当に家族を大事にしている行動なのか?」と捉えられるような事をしていることがありました。本心では、ただ自分がやってみたいと思っただけなのです。それなのに、「これは最終的には、家族のためになる事だ」と自分に言い聞かせて、都合のよい、相手を納得させる理由を思いついて説明をする。あながち嘘ではないけれど、一番の本心ではなく、「家族」に結びつけて自分の行動を解釈しようとしていた、それに気が付いたのです。つまり、「自分をごまかしている」という事です。そこから、僕自身に対して、問いを立てる事で行動を修正していこうと思うようになりました。

 はじめに取り組んだことは、問いを毎朝5個考える事でした。3カ月近く続けたので、作った問いの数は400個ぐらいでしょうか。問いに対して、答えてもいいし答えなくても良い。とにかく問いを考える事を続けているうちに、自分の行動に対して、自然と問いが立てられるようになっていきました。問いによって行動修正するという事が、日常的に出来るようになってきているのが大きな変化であり、一番、僕にとって役立っています。

問いを立てる事で行動修正をする。その具体例は、なにかありますか?

  オンライン講座内のコーチングセッションの練習で、今でも覚えている問いがあります。僕がクライアント役の時に、「目の前のテーブルタップのコードがぐちゃぐちゃしているのが気になる」というテーマを出した事があります。「いつ、気になるんですか?」と訊かれました。「オンラインで練習する度、毎回気になるんだ」と話しながら、はたと気が付きました。毎回気になるという事は、嫌なのに直していないという事です。これは、見て見ぬふりをしているんだという事に思い至り、ここから、会社でも見て見ぬふりをしている事が多々あるという事に、思考は発展していきました。見て見ぬふりをするから、イライラが続く、イライラがまた来るのだと。

 その会社での具体例があります。僕の3m先を、人が歩いていました。通路にゴミが落ちていたのに、その人は拾いませんでした。僕も、そのごみを拾わずに通り過ぎました。その時、「あ、これって見て見ぬふりをしてる」って事に気が付いたんです。ごみを拾って捨てるなんて、数秒で終わる事です。見て見ぬふりをするのではなく、自ら行動をする事で、僕自身が大切にしている事、本質の部分かもしれませんが、それを守る事が出来る。そうやって、行動をしていったら、イライラも減っていきました。

 もう一つの例として。1年程前に接点のあった若い年下の新入社員と、社内ですれ違う事がありました。相手は、僕を認識しても挨拶がありませんでした。僕自身も挨拶をしませんでした。この時、「なぜ、僕から先に挨拶をしないのか?」と、自分自身に問いが沸き上がりました。翌日、またすれ違ったので、僕から「おはよう」と挨拶をしてみました。相手はびっくりしたような様子で、「あ、おはようございます」と返してくれました。また、その翌日もすれ違いました。今度は相手から、「おはようございます」と挨拶してきてくれました。この事は、僕にとって、衝撃的な出来事なのです。「自分が行動を起こせば、相手は変わる」という事を、まさしく体験した瞬間で、自分が出来る事をする、それが僕自身が変わったところだと思います。

 この「行動を変えていく」には、問いを立てる事が一番機能していると思っています。僕の癖で、良いな、面白いなと思うと、すぐに行動に走ってしまうところがあるので、一旦立ち止まるという事が重要になってきます。問いを立てて、一瞬考える。コーチングを学ぶ前は、そんな事はしませんでした。

 

コーチングをどんなふうに活用していますか?

  セッション中だけでなく、日常で、“特に家庭内、もっと特定するとうちの奥様“の話が聴けるようになりました。「本当にわたしの話を聴いてもらった気がした」と頼んでもいないのに(笑)フィードバックをもらえたんです。この時は嬉しかったですね。以前の僕は、結構、人の話は聴けるほうだと勘違いしてたんですよ。でもね、全然聴けていなかった。話が聴けているか聴けていないか、今は自分である程度分かるようになってきています。目の前で話している人のために、何かしてあげたい、何か良い方法を考えてあげたいなどと意識が強すぎると、話を聴いている最中に思考が動いてしまう。ニュートラルな状態で、話を聴けているっていう時もあれば、それが出来ていないっていう時もあるので、その違いがわかるようになりました。

 また、研究開発部門の人財育成の一環として、試行錯誤しながら、コミュニケーションを学ぶ1.5時間の講座を6回シリーズで行っています。他に、2015年から社内でコーチング同好会をいうものも運営しています。月に1〜2回ランチミーティングをして、コーチングについて話したり、ワークをしたり一緒に学ぼうという会です。部内のメルマガのようなものも配信していて、コーチング関係の本や役立つ本を紹介しています。

 講座やメルマガで紹介した本が、部内の社員の机に置いてあるのを見ると、ちょっと嬉しくなります。「あ、買って読んでくれたんだ、役にたったかな。」って思います。情報を発信していると、「矢口さん、この本読みました?」って、教えてくれる人も出てくる。本の情報が送られてきたら、スルーする人もいるだろうけれど、その本を手にするきっかけになってくれたらいいなと思って、配信しています。そして、コミュニケーションを引き起こすきっかけとなったら、もっといいなと思っています。

これから、どんな事をしていきたいですか?

  ふらっと立ち寄れる居場所のようなものを作りたいと思っています。話す場を作るという事。これは、社内社外どちらでも作っていけたらと思っています。

 また、チームやプロジェクトを支援しながら、コーチングを通して一緒に作り上げていく事。質問から話を広げたり、客観的に見て見える事を伝えたり。メンバー間の温度差をキャッチして、話を聴いていく中で共通の部分を発見したり、実は根っこの部分は同じ事を思っているんだという事に、メンバーが気がついたり。意見の対立は色々あると思うけれど、和を乱さず表面上まとまっているようなチームではなく、ぶち壊すぐらいの向き合い方をして、それからまとまったらいいじゃないって。そんな支援の仕方を目指しています。一人の力が突出している個人商店の集合ではなく、みんなが共創して作り上げていくような、お互いの繋がりの中から考えもしなかった事をやり遂げるような、そういう状態を作りたいし、それを体験する人を増やしたいと思っています。

 そして、最終的には、僕がいなくても走り続けてほしい。ただ、そこでちょこんと見ているだけで、チームは勝手に動いていく。そこにいる僕のイメージは、大仏。ただ、本当に大仏になってしまうと、完全に何も言わない状態なので、それはちょっとつまらない。たまには、ちょっかい出したいので、たまにつぶやく大仏が理想です。最終的な僕のゴールは、ここかな…。

 退職後は、高校生や大学生のような若い人と一緒に、何かを作っていくような、そんなかかわりができたらいいなと思っています。

趣味はドライブ。ボディカラーは世界に100台あるかどうかのこだわり。18万km走行でも快適です。

最後に、コーチングとは?

 「自分も人も支援する」という事。そして、可能性を信じる事。

 「人を信じる」というのは、どうも嘘くさい。でも、「人の可能性を信じる」は、できるなと思います。その人そのものではなく、その人のこれからの事についての可能性であれば、それは信じることができる。可能性とは、一度決めたゴールを頑なに目指すのではなく、柔軟に変化し、のびやかな未来を創りそれを目指す事。それに向けて、支援する事です。