- 受講生インタビュー
「心理資本形成」と「つぶれない会社作り」のために。
町野 文孝(まちの ふみたか)
中小企業診断士(戦略策定支援)
1級FP技能士(保険・金融資産活用支援)
国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチPCC(組織変容支援)
共創コーチ®
昭和31年11月3日生まれ(還暦+6)
大阪府出身
【金融・保険資産形成・活用サポート】
つぶれない会社つくりに必要な財務体質強化につながる
最適な保険・金融商品の設計
【心理資本形成サポート】
いきいきとした会社つくりに必要で最適な組織開発・変容
目標設計の実践とサポート
会社の「未来創造」を実現します!
はじめに、主なお仕事内容について教えてください。
私は、企業や財団等を対象に、リスク・ライアビリティマネージメントというリスクとか負債の管理を、株や保険という金融商品を使って対応するサービスを提供する会社を経営しています。 当社・株式会社インターテックのスローガンは「つぶれない会社作り」です。
一つは、地震で工場が壊れた、従業員が機械に巻き込まれて労災事故を起こした、自動車 事故を起こした・火事が起きた等のリスク領域の管理です。
二つ目は、役員や従業員や退職金の設計、余剰資金の運用効率の向上という資産・負債管理領域のサポートをする事がメインの仕事です。
コーチングとの出会い、きっかけはなんだったのでしょうか?
私は会社を設立して30年になるのですが、今から5〜6年前まで、退職する従業員の問題にずっと頭を悩ませていました。会社に入って1〜2年という社員ではなく、新卒の22〜23歳で採用した社員が、7年目、8年目くらいになると辞めていくのです。大体30歳くらいになって、こちらもいよいよ期待し、戦力としてという時期に辞めていく人間が多くて、なぜこんなに退職者が続くのだろう?と悩んでいました。
そんな時、お客さまで懇意にしていた経営者の方に相談をすると、「コーチングを受けてみたら?」とジョニーさんYOKOさんをご紹介いただいたのです。その方は、ご自身の課題整理を手伝ってもらうのに、コーチを使っていますという事でした。これが、自分とコーチングとの出会いになります。
ご紹介頂いたジョニーさんに、私の話を聴いていただきました。多分、いろんなことがあり自信も失っていたのだと思います。強がってはいましたけれど、退職者も続出する、売上も落ちてきている、どうしていけばいいのか?…そんなときに、ジョニーさんが傾聴姿勢で頷いてくれたり、反応してくれたり「あなただけに問題があるというわけでもないのではないですか」というような事を言ってくださいました。承認されて、すごく嬉しかったのと「本当に生き帰った」というぐらいの感覚を感じたことを覚えています。それまでは、悩みがあると、その領域のコンサルタントや専門家に色々と相談していましたが、それとはまるで違う経験・深い満足感を感じました。
そんな当時の私の信条は、「成果・自分第一主義!」わからないことは、俺に聞け!俺が教える!まずは何かあったら俺に!俺に!とやっていました(笑)。短めな言葉で、パンパンっと言って、あとはやってみろ!やってみたら、よくやった!ではなく、ここはダメだ!みたいな、そういうダメ出し感満載でしたね。結果が出ないと、全く承認しなかったので、今思えば、退職者が出るのも当然といえば当然です。社員との関わりは持っていましたが、相手を認めて信じてという姿勢ではなかったですね。
「成功体験・成長体験を積み承認される」という組織運営ではなかったので、恒常的に複数の退職者が出てくる原因は、これなのではないかと思いました。この問題解決のためにもコーチングをものにしたいと考え、取り組もうと決心しました。
共創コーチングでの経験は、どんなものでしたか?
コーチングの可能性に気がついてから、毎月毎月、共創コーチング株式会社のある金山へ通いました。一気に、4つの基礎コース、養成コース、グループコーチングと間を空けずに進みました。そしてその傍ら、月に1回のコーチングセッションを、ジョニーさんにやっていただいていました。
共創コーチングでは、普段会わない色々な方々と会うことができました。私の場合、仕事上で同年代の中小企業の経営者とのやりとりが多いものですから、本当に新鮮で面白かったです。そして、本当に驚いたのは、何回も会ったわけではない受講生の方々に、自己開示ができてしまうことです。ワークの中で、「重い病気で体を何回も壊したことがありました」と開示する方がいたり、私だったら「今、会社でこんな事で悩んでいます」とか、そういった深い話をやりとりする、これはすごいな!って。
今思うと、自己開示ってあまりしてこなかったですね。名前や出身地、持っている資格、どんな仕事で…といったビジネス上のことはお話ししてきましたが、「自分の会社は、人がなかなか定着しない」なんて言わなかったです。経営者仲間でも、何回かお会いして、食べに行ったり飲みに行ったりして、やっとフィーリングがわかって、やっと素の部分や弱い部分が出せる。ところがスクール仲間には会って数回にもかかわらず話せてしまうという…本当に目から鱗な経験でした。
実際、コーチングを学んでからどのように活かされていますか?
まず、社員との関わりが変わりました。お陰で、退職者が止まったのが大きな変化のひとつです。そして、私どものお客さまに対して「実は私、今コーチングという事を社内に展開しておりまして、とても効果がありました」と体験談をお話したところ、「うちも、ちょっと大変で困っている」という経営者の方がおられました。「何かサポートさせていただきましょうか」ということになり、それが、今私がやっている「組織変容コンサルタント」の始まりです。
これは「組織変容コンサルタント」と言っていますが、使っている手法はコーチングで、1on1やグループコーチングの提供ですね。クライアントは、全て同族経営の中小企業です。今、8社のお客様にサービス提供をさせていただいております。サービス提供のフレームは、経営陣、40代50代の部課長・工場長、主任・係長といった3つのグループに分けて、1社につき大体平均14〜15人を対象にやっています。
経営陣は経営者だけなので、1on1中心に、2番目の部課長・工場長のグループは、1on1とたまにグループコーチングを、3番目の現場の働き盛りの主任・係長のグループは、時間捻出のこともあるのでグループコーチングを中心に、補完的に1on1を入れて行っています。
この若手のグループコーチングは、月に1回90分間でやっていますが、面白いですね。仮にメンバーが5人いるとして、Aさんがその場で一番キャリアがあり、且つやる気があまりないような発言をされると、Bさんもやはりそれに倣って残念なお話をされたりするのですが、しかし、どこかのタイミングで誰かが「僕はやる気あります!」みたいな発言が出てくるのです。全員が全員、いつまでもネガティブではないというのが、大きな気づきであり面白い部分です。しかも、どの会社でも発生するのです。
だからグループセッション当初は 、ネガティブ含め本音の開示を行う段階(「本音」の第一段階)、その段階を経て生じる何とかしたいという段階(「本心」の第二段階)、そしてそこから目標設定や行動策定に移行していく(「本気」の第三段階)…という形となって運営していっています。
そのグループコーチングでの面白さや難しさとは、どんなものでしょうか?
まず研修という形で、オリエンテーションを行います。この時の参加メンバーには、必ず同じ事をお伝えします。この「心理資本向上プロジェクト」グループコーチングのテーマは、「10年後の会社はどうなっているか?自分達は、どういう立ち位置で働いているか?を考えましょう!」という事をあえて扱います。
なぜなら、私のクライアントは企業なので、会社の「目標」というものがあります。例えば、1分間で金属部品を何個作るとか、3ヶ月でいくら売ってくるとかです。これをただトレースするだけでは、能動的に前に進んでいかない。彼らの日常は、毎日毎日いかに作るか、いかに売るかという事で精一杯です。もっと言うと、毎日業務を回すのに必死なんです。そこで、あえて「10年後」というキーワードを入れて「将来の自分と今の自分とのつながりはどうなっているのか?」と、上手く「目標」と「ギャップ」を前向きに捉えてもらう事をとても意識してやっています。
そして「場作り」です。ここでは何を言ってもいいのだという認識共有に努めます。「会社のここが悪いでも、遠慮なしに本音で言ってください」と「できるだけ自分の気持ちに沿った形で話してください」ということの実現に、一番力を入れています。そのために、私自身の大失敗の話を、自己開示のサンプルとして極力するようにしています。
始めのゴールは、自分の思っていることが言えるという事だと思っています。私自身も自己開示がなかなか出来ませんでしたし、この年になってもまだまだ恥ずかしいというのがあります。
こういったグループコーチングをやっていると「10年後の会社なんて、社長が考えることでしょ!」っていう従業員の方の反応が圧倒的に多いです。私が携わっている企業様は、大体60代の経営者で、血縁関係で、適当な候補者がおられないという前提があったりします。
となると、10年後の社長は、さすがに第一線で今のように開発したり営業したりは難しいですよね?というと、大抵の方が同意されます。「しかも専務も同じような年齢ですね。では、次の世代の部・課長さんはどうでしょう?」となると、「それはまだ信頼がない」「いや、それは困る」という反応になり、そこではじめて我が事として考え始める。
考えた事がなかった事を考えはじめた時に、「課長の誰々さんが引き継いだらいい」とはならず、「あの先輩が偉くなるんだったら、嫌だ」「課長のAさんが社長になったとすると、もう、絶対に嫌です!」とか出てきます。では、どうやってそれを考えていくのか?と「そんな事考えて意味あるの?」というところから、おそるおそるスタートしていくんです。普段は、「今日の納品どうしたらいいですか?」みたいな事で、ずっと頭の中を占めている日々を送られている中で、「10年後って言われてもな~」っていうのが本心でしょう。
それでも、グループコーチングを続けていくと、発言者が増え、仕事に対しての自分事感・当事者意識がぐんと高まります。そして結果として退職者は少なくなります。そこそこやる気もあって、能力もまぁまぁあるという方が、一気にグッと伸びて活躍されたりします。思考ループというか、頭の中にある殻をちょっと取ってあげると、パーンと出てくる人がいます。4〜5人いれば、1人ぐらい出てきます。
実際、私の携わる企業様は、大企業の下請けをされている企業が多いので、言われたことをきちっとやるというのが、企業活動の大テーマです。採用基準も「言われたことをきちっとやる人間か?」という観点が第一となります。だから、人のポテンシャルも組織風土も「言われたことをきちっとやること」中心なので、人材はそのように育ちます。
だから指示を実行することは身についていても、「そもそも何をしましょう?」と考える事をあまりしてこられていないのです。ただ、中には、言われた事をきちっとやるのはわかっているけど、もうちょっと自分達にやらせてほしい、物足りないという人が一定数います。その人たちが、パーンっと出てくるということなのかもしれません。
こういう人達は、本当に目に見えるように変わっていき、伸びていかれます。そういう方がいる反面、「10年後はやっぱり社長が考える事でしょ」と考える方も普通におられるので、ばらつきはあります。ただ、1人パーンっと出てくる人がいると、全体に意識が上がります。それは間違いありません。
今、8社ほどお付き合いされている企業様がいますが、そこに至るまでの苦労はどんなものでしたか?
私もそうですけれども、中小企業の経営者というのは、失敗を極端に怖がります。そして、社員を認めると舐められるんじゃないか、ついて来て貰えないじゃないかと、恐怖感に近い反応を示されます。一般的に社会通念として従業員が弱く、経営者が強いという考えがあるかと思いますが、中小企業の経営者の場合、逆で、私は強くないと思っています。
従業員の方に、働いてもらい、生産性を上げてもらわないと、ご自身の生活も成り立たないという構造になっているので、経営者と従業員がお互いに協力し合い、共創していこうという理念が馴染むと考えますが、実際は、それは現実的ではないと考える経営者が多いです。
どちらかというと、「規律と不安と恐怖を基本運営方針としたい」と考える経営者の方が多いように思います。ですので、私どものような外部の人間に依頼する場合、社員に厳しく接してくれること、変えてくれることを望まれる経営者が多いです。「心理的安全性云々という話は、グーグルだからこそ成り立つ話だ」と。もちろん、一部分そうだと思います。中小企業で、「承認」「心理的安全性」「心理資本」そんなことで果たしてやっていけるのかと不安になられる。その時に、厳しいマイクロマネージメントの申し子みたいだった私が、全然うまくいかなくて、今こうしてコーチングを使ってやって来たことをお話しして、「そうか」っていう人もおられます。とはいえ「う〜ん、そうなのかなぁ…?」という方の方が、残念ながら多いのが現実です。
最近のアプローチテーマは「心理資本の充実って、どう考えていますか?」です。
どうしてかというと私の会社は前述の通り金融・保険商品を駆使して、スローガンである「つぶれない会社作り」を実現する事業展開をしてきました。ありがたいことに倒産した企業は1社もございません。
しかし、最近、廃業するお客さまが出てきたのです。後継者がいないので会社を閉めるといわれたのです。ショックでした。その社長からは、従業員も 自分の退職金も用意できて、みんなの生活保全もできた。自身の老後の病気や介護に対しても手当てができて、ありがとうと言われましたが、全然嬉しくなかったですね。金融・保険商品を使ってのコンサルティングの限界です。会社を発展・成長させるサポートができなかったわけですから。
そこから、私が提唱しているのは、「心理資本を充実させましょう」という標語です。「心理資本」は、私が作った造語です。「みんなが毎日会社に来るのが楽しくて、一緒に働いている人も前向きで、今も良いけど10年後もきっと良いと思える、安心感溢れる会社作りということをやっていきませんか?」とお伝えしています。
従業員の方たち全員が、「10年後なんて社長が考えることでしょう」と言っている間は、なかなかうまく行きません。まずは、体制であったり、マインドであったり、事業自体が発展・成長していくところをどう作っていきましょうかという切り口で、アプローチする事が多くなりました。すると、社長も乗ってきます。幹部も、従業員もとなります。そして、その条件は闊達なコミュニケーションが必須となってきます。だから相手のことを尊重する、目標設定を持って働いているなど、コーチングという手法が馴染むのです。
「心理資本」という事について、もう少し聴かせてください。
よく、「失敗から学びましょう」って、色々な本に書かれています。でもね、私は普通「失敗からは学べない」と思っています。学ばない、学べないです。痛みもありますし、当然人としての保身本能というものがあります。それがデフォルトだと思います。だから、グループコーチングの中で「失敗を話してください、失敗から学べる会社を目指しましょう」と強く言っていきます。
中小企業の経営者は、「新しいことをやれ!でも失敗はするな!」って言います。「新しいことをやらんといかん!でも、会社はそんな体力無いからあまり失敗しちゃいかんぞ!」って。これは無理です、あり得ないんです。でも、ご本人は、あまりあり得ない事を言っているとは思っていないですね。
失敗から学ぶというのは、何かあった時「お前、何してるんだ!」っていう会社だと、実現は難しい。間違いなく萎縮して、言われた事だけをするようになります。だからといって、あまりにハードルを下げて「失敗してもいいや」というのも違うと思います。だからこそ、失敗しないように努め、そして失敗があることも受容して、必要以上にへこまず、しっかり学んでいくという環境がとても大事です。承認できる風土がある、共創の世界観。それがあれば、失敗とうまく付き合える会社になっていける。心理資本というのは、会社内にある 関係性やマインドセットを作っていくことだと思います。
10年後の町野さんは、どうなっているのでしょうか?
2つやりたい事があります。
一つは、今やっている「つぶれない会社づくり」をサポートする金融コンサルタントサービスの充実。業法の関係で、この事業は内製化で社員を育てていくという方針で進めていきます。
二つ目の「心理資本形成・充実」サポートサービスです。こちらは外部でコーチングの資格を持っておられる方で、私がやっている事に賛同してくださる方々とネットワークを広げて、一緒にやっていくことができたらと思っています。10年後、そんな事を視野にいれてやっていきたいです。
最後に、町野さんにとってのコーチングとは?
人生観・人物観が変わりましたから、私の人生において非常に大きな骨格という感じです。私は承認基調ではありませんでした。できた人間、できている人間、できそうな人間は、承認するというタイプで、人は信頼しようと思っていましたが、それに基づいてその人の可能性まで信じるというところまで、信頼を持てていませんでした。例えば、「君を信じるけれども、ひょっとしたら無理かもしれないので、俺の言うこういうやり方をやったほうが、君は成功するよ」みたいな(笑)。それって信じているのかって話ですよ。でも、そういう事に気づいていなかったですね。
「自他非分離」という言葉の通りなのです。相手の事を、存在から本当にしっかり承認する事じゃないかと思います。私は自意識がかなり強めです。だから、自分に対するのと同じ分量で、相手のことをしっかり承認できる・尊重できるという部分が上手くできてこなかった。
だからこそ「共に創る」という事が自分の基本方針としてとても大事だと意識しています。