- 受講生インタビュー
ベースにコーチングがあるから、人生を一緒に歩んでいく仲間が出来る。
田中 亮丞(たなか りょうすけ)
名古屋在住。学生時代に人の心への興味から心理学を学び、その後、アプリケーションデザインやコーチングへ関心を昇華させた。IT企業でUXUIデザイナーとして活動する一方、コーチとしてICF認定プログラム(ACTP)で研鑽を重ね、共創コーチ®︎資格の最年少認定者となり独立。
誠実な人柄とスペシャルな共感能力で人気を集め、クライアント満足度は驚異の95%を誇る。セッションを通して高校生から大人まで幅広い年齢層のクライアントの人生をサポートしている。 現在は、コーチングに興味があっても気軽に学ぶ場が無いことに課題感を持ち、80名を超える同世代コーチが集うコミュニティの運営を行う。
まず、お仕事の中で、コーチングをどのように使われていますか?
僕は、IT企業でUIUXデザイナーというアプリのデザインをする職種で働いています。仕事をする上で、コミュニケーションは必ず起こりますから、コーチングは、色々なシーンで役立っています。
例えば、ミーティング。アプリの仕様やデザインについて、様々な意見が出ます。こういう要件が良い、デザインはこれが良い、ユーザー視点に立つとこんなのがいい等等…。アプリ開発というのは、使うシーン、ユーザーの置かれている環境や条件、ありとあらゆる使われ方を検討します。そうなってくると、どれが良いのかわからなくなってくる事もしばしば。
そんな時、プロジェクトの1デザイナーとして参加するだけでなく、グループコーチング的に俯瞰して捉え、コーチ目線だとどんな問いがあったら、話が進むのだろう?と考えます。「そもそも僕たちは、どんなサービスにしたいのか?」「色々話してきましたけど、一番大事なことって何?」など、コーチングでよく使われる質問はとても役立ちます。議論が煮詰まった時、適切なタイミングで適切な問いかけをして起点を作ってあげると、会話は再び熱を帯びて進むようになります。
また、デザイナーの仕事の一つとして、UXリサーチというものがあります。UXは、ユーザーエクスペリエンスの略で、「ユーザー体験」を指すのですが、アプリの開発を始める前に、お客様のニーズを知るべく、直接インタビューなどを行う大切な業務です。ここにもコーチングは、とても役に立ちます。
リサーチでは、問う力が必要です。直接的に、「最近困っている事は、どんな事ですか?」とお客様に聴いても、あまり答えてもらえません。そのお客様の意識に上がってきている問題であればお話頂けますが、無意識に抱えている事は答えられないのです。つまり、お客様が顕在的に困っていると思っていなければ、「あ、ないです。」と回答されて終わります。この方法は、こちらの仮説を基にピンポイントで質問する。一問一答で聴いていく事になってしまい、もはやアンケート用紙に書いてもらっているのと同じことになってしまいます。
それに対し、コーチングを活かしてお客様と向き合うと、主体的にお話いただくスタイルになります。例えば、「一日の業務を教えてください」と広めに聴き始め、周辺情報をお話しいただく。気になったところで、「それをしている時って、どんな事を考えながら話しているのですか?」等と質問してみる。すると、その方の業務に対して、内面で起きている事まで聴いていく事ができる。傾聴・おうむ返し・質問・合いの手など、聴き手としての技術をふんだんに使って、いかにたくさんお話しいただくか、聴きだせるかが重要になってきます。
このリサーチで得た情報を元に、具体的なデザインに落とし込んでいく。お客様の体験を想像しながら、その体験が良いものになるようにデザインをする。こう作ったらどう反応するのか、どう動くのかを想像しながら、一つ一つ作り上げるプロセスは本当に楽しいです。
共創コーチングとの出会いや、学びの中でのお話を聴かせてください。
まず、コーチングとの出会いは、当時所属していた「TEDxNagoyaU」という学生団体でした。そこでは毎年100人規模のプレゼンイベントを開催しており、イベント当日は運営ボランティアの方が外部からも来てくれます。そのボランティアの方の中に、コーチングを実践している方がいました。当時、コーチングというものは初耳だったのですが、話を聞いているうちに面白そうだと思ったこと、たまたま同郷だったこともあり話が弾み、後日コーチングセッションを受けさせていたただけることになりました。その時、自分の持っていた悩みが、話をしているうちにだんだん輪郭を成してきて、解決していくという体験をしたのです。悩みが解消したことよりも素直に、「コーチングってすごい!」って感じました。
その後しばらくして、コーチングができるようになりたいなと、次第に思うようになっていきました。僕がコーチと初めて出会ったTEDxNagoyaUのイベントを、共創コーチング(株)さんが協賛してくださっていたことを思い出し、メールをしてジョニーさん・陽子さんと出会いました。自分が力を注いだイベントがきっかけとなり、コーチとコーチングスクールに出会い、学べる環境が名古屋にあるというこの一連の流れは、奇跡的だと感じました。大学2年生の時にコーチングを学ぶことを決意したのです。
学びは一筋縄ではありませんでした。僕は友人によく「聞き上手だね」と言われることが多かったのですが、コーチングが上手いんじゃないかと思って、初回のプログラムに向かいました。ところが、周りには自分の倍以上の人生経験ある方ばかりで、自分が霞むくらい、みんな話の聞き方が素晴らしく上手でした。最初のワークから、色々聞き方についてフィードバックをもらい、「未熟すぎる!!」と痛感しました。負けず嫌いな僕は、「絶対上手になるぞ!」と、逆に燃えてきたのを覚えています。周りの方々にも手助けしてもらいながら、1年以上かけてたくさんのことを学ぶこととなりました。
お仕事の傍ら運営されているコーチングコミュニティについても教えてください。
「コーチングライフ」という20代のコーチが集うコーチコミュニティを運営しています。2020年の秋ごろ、僕が大学4年生の時に立ち上げました。当時、コーチングを学びたい、コーチングを知りたいという方が何人も僕の周りにいて、「コーチングを教えてほしい」と言われたのがきっかけです。
僕にできることがあるなら!と、初めは、3ヵ月間の大学生向けセミナーをやることにしました。隔週2時間、計6回のオンラインセミナーです。これに、毎回ジョニーさんがゲストで来てくれていました。事前に作ったセミナーの資料を毎回チェックしてくださったり、セミナー中には、僕が質問されて困っている時に援護射撃してくれたり、セミナー後には反省会に付き合ってくれたり。色々と手助けしていただき、本当に、本当に感謝しています。一度、陽子さんにも来ていただきましたが、その回は陽子さんの質疑応答の受け答えが素敵すぎて、参加者のみんなが唸っていたのを今でも覚えています。
今も運営を継続されていますが、ここに至るまでにどんな事がありましたか?
初回のセミナー開催期間中に、「僕も受けたい」「私も受けたい」という連絡を数多くいただきました。最初は特に続けていこうとは考えていなかったのですが、単純に同じ時代を生きてきた人が、自分が好きなコーチングというものを知りたい!って思ってくれていることが嬉しくて。自分の身の回りにコーチングを学びたいと言ってくれる人がいる限りは、絶対やったほうがいい!と感じ、継続していく事にしました。
また、ジョニーさんにはセミナーを毎回たくさん褒めてもらいましたが、僕自身の自己採点はかなり低く、見直したい点が多々ありました。毎回反省だらけで悔しく、もっと良い形を目指せるという思いも、これから続けていこうと思った要因でもありますね。今ではセミナー受講者も80人を超え、2022年2月から第5期が始まりますが、いまだにセミナー資料のブラッシュアップを続けています。内容の変更、追加、やり方の工夫などなど。参加者の様子をみながらワークのすすめ方を工夫したり、毎回新しい何かが生まれています。
もちろん、順調にここまで来たわけではありません。セミナーの参加率が、5割~4割まで下がった時期もありました。「スラック」というコミュニティアプリを使っているのですが、僕の発信に、あまり反応が返ってこなかったり…。コミュニティをどう活性化したらよいのか?と悩み、ずいぶんと試しました。
色々試した中で一番効果があったのは、スラックのチャンネルを1つ増やして、そこに「セッションについて」を書き込んでもらう事でした。例えば、「今日コーチングセッションしました」「こんな感じでセッションできました」「こういうところが上手くいかなかった」などなど…。そこに、僕やメンバーが返信をする。みんなに見える場で、共有していく。それが結構良かったようです。過去の参加者もコメントを入れてくれます。少しずつでも、コミュニティにコミットしてもらえるような場を作ったら、そこを起点にセミナーの熱量も、コミュニティの活動も段々活性化していきました。
コミュニティが活性化し始めて、どんな展開が新しく起こっていきましたか?
スラックのコミュニティがどんどん活性化してくるようになると、セミナーが終わる頃には、一体感のようなものが生まれてきます。最初は、コーチングを学べればいいぐらいで入ってきた参加者が、コミュニティの活動に参加してくれるのは本当に嬉しいです。この中でも、特に熱量が高いメンバーは、セミナーに次ぐ、もう一つのコンテンツであるコーチングライフミートにも参加してくれます。
このコーチングライフミートとは、日本全国のコーチングライフのメンバーが集まって、不定期ですが、三か月に1回ぐらいの頻度で、一軒家を借りて1週間共に過ごすというワークショップです。きっかけは、メンバーの1人が、京都に安く借りられる宿の話を持ってきたのが始まりです。コーチングの「メンバーで泊まったら楽しそうだね」ぐらいの、ノリで始まった事なのです。が、これが、すごく良かった!
メンバーが全員コーチなので、自由な対話があり、自然発生的にコーチングセッションが生まれました。自分の持っている悩みから、アクションが決まり、1週間という期間内に京都の町で実行する。場のエネルギーが高くて、何でもできそうに思えてくるのです。これは、すごくいい!となったんですよね、その時に。
非日常の場にみんなで集まって、エネルギーを持って1週間過ごす事。例えば、悩みを持ってその場へ行き、1週間という枠組みの中で解消されていくというプロセスは、広い意味でコーチングと捉えられるのではと思います。
このワークショップで過ごしたメンバーと、その後どうなったのか?進捗は?などと連絡を取り合ったりもします。セミナーの同期ではなく、本当の仲間になった感じ。学びを共にする仲間ではなく、「人生を一緒に歩んでいく、仲間」、そんな思いがあります。
今後、コーチングライフは、どんな展開を目指していますか?
ミートは、これからも洗練させていきたいコンテンツです。それ以外に、コーチングを同世代にもっと広める活動をしたい。コーチングの仕方を伝える事はもちろんですが、まずはコーチングを受けて生まれるものを受け取ってもらう事に、とても価値があると思っています。今まで、コーチングライフのメンバー同士では、コーチングセッションを盛んに行ってきました。これからは、コーチングライフのメンバーが、コミュニティの外の方に向かって、コーチが提供したい時間を提供していく事をしていきたいです。学生・同年代の若い世代にむけて、「コーチングを学ぶ」には行かずとも、コーチに話を聴いてもらうという体験から、コーチングっていいなとなって、ソフトに広げていく事。スクールとしてよりコミュニティとして、どう伝えて、どういう形で広めていくと良いのかが次の課題ですね。
それから、僕の個人的な思いですが、「コーチングというものを一生涯かけて、みんなで探求していきたい」と思っています。例えば、ミートで過ごす中でも「コーチングってこういうことだよね」っていうものが生まれます。ICFが定義しているコーチングをそのまま受け取るのではなく、自分たちの体験や哲学も合わせて、各々が定義する。コーチングを解釈し直すプロセスを、みんなでやる。集まる人によって、コーチングとは何ぞやの解は、毎回違うものが生まれるし、同じメンバーでも進化していくと思います。生き方、哲学を磨きあう場なのかもしれません。まさに、「人生を歩んでいくコミュニティ」ですね。
最後に、学生に向けてメッセージを送るとしたら、どんな言葉を送りますか?
「自分の足で立って歩いていこう」と伝えたいです。僕自身、コーチングを学ぶ前は、上手く生きよう、効率よく生きようとしているタイプでした。でも、コーチングを学び、様々な体験をすることで、「効率よく生きる事で、見えなくなっているものは何か?」と考えるようになりました。本で読んだ事は自分の知識としかならないけど、自分の頭で考えて経験する事は、いつまでも印象に残っています。こうしたほうがいいよってアドバイスされて、それをするだけでは、何か大切なものを置いてきちゃった感じがします。人生って、色々あるから楽しい。むしろ、色々ないと面白くない。そんな風に、自分自身が考えるようになりました。
学生にコーチングをするのは、思考の深度が浅く機能しにくいというような話を聴いた事があります。学びはじめは確かにそうかもと思っていましたが、今は違います。どんなに稚拙な考えであっても、とにかく自分で考えた事を、やる!そしたら、一歩登れるから。それを若いうちから積み重ねていったら、社会人になった時、きっと大きなものを手にしていると思います。この感覚って、人生歩んでいく上で個人的にすごい大事だと思ってるんです。
「自分を捨ててまで効率的に生きなくてもいいんだよ」
「自分の足で立って歩いていこう」