• 受講生インタビュー

コーチングを存分に使って、私は『いなべ*のビッグマザー』になりたい。

PROFILE
山崎基子(通称 やまちゃん)(やまさき もとこ)

2018年「Mikke Project 」開業
2019年「点心専門店Fuu」Open
2021年「株式会社イナベキカク」開業

20年間で24種類の仕事につき、『マグロのやまちゃん』と呼ばれるほどあらゆるジャンルでトライし続ける38歳。
2020年に人を雇用し始め、社長としてこのままでは社員教育をするためのスキルが自分にないと悩んでいたとき、共創コーチングと出会う。『人の視点に立ちながら共に成長していく』という、まさに『共創』の理念でチームビルディングを行なっている。
2021年に共創コーチの資格を取得し、女性起業家支援コーチとしても現在活動。幅広くコーチング技術を活用している。

*いなべ:三重県いなべ市のこと

簡単にお仕事の事を聞かせてください。

 肩書は何ですか?と聴かれるのが一番むずかしいのですが、「地域資源活用プロデューサー」と名乗っています。多岐にわたって様々な事をやっています。

 初めに、個人事業主「Mikke Project」を起業。その後、「点心専門店Fuu」を開業。コワーキングスペース&レンタルハウス「okudo中村舎」を開業。202112月に「株式会社イナベキカク」を立ち上げました。今年の春に任期満了にて退任しましたが、地域おこし協力隊として「いなべ市移住促進&空き家利活用担当」もしていました。

コーチングを学ぶきっかけは、何でしたか?

 2019年の秋「点心専門店Fuu」を開業し店舗を持つことになったのが、ひとつのきっかけになります。

 私自身、実にたくさんの仕事を経験してきているのですが、その中の一つに「飲食店で働く」という事を長くしていました。実際大変ですし、儲からない仕事だと思います。飲食店なんて絶対するもんかって、思っていたんですよ。それが、いろんなご縁が重なり飲食店を開業する事に。そこで、一つ決めた事があります。自分がメインでお店に立たない、という事です。スタッフを雇い、私がいなくても回るシステムをつくる。そして、私の色だけでなく、スタッフみんなの色のお店をつくりたいと考えました。

 お店の店長にはチェーン店や個人経営などの飲食経験豊富で、私の二回り歳上の男性にお願いし、副店長には結婚式場の調理場にいた実の妹にお願いしました。他にも従業員を何人か雇い、開業当初は7名ほどの大所帯でスタートしました。

 社員教育という面で、保育士をしていた経験もあり、アルバイトの高校生などはあまり苦ではありませんでした。しかし、かなり歳上の店長にはどうしたらいいのだろう?と途方に暮れてしまい、ついには店長の悪いところしか見えず、口を開けば怒りそうな自分がいました。開業して2か月でコロナ感染が広がり、売り上げがガタ落ち。お客様は来ないし、自分の思うようにスタッフは動かないし、人件費は高いし…。とうとう、自分自身が嫌になってしまいました。焦る気持ちと「自分ならもっとこうするのに!」というもどかしい気持ちとで、舵を任せている店長にしっかり話しをする事ができなくなっていたのです。このままの私では、ダメなんじゃないか…、と悩みました。

 そんな時、ゲストスピーカーとして私が登壇するセミナーがあり、そのファシリテーターが稲垣陽子さんだったんです。その時初めて、「コーチング」という言葉を知りました。なんだか面白そうだなと。陽子さんと出会って、2か月後ぐらいに体験会に行ったのが、コーチングを学ぶきっかけになりました。

コーチングを学んで、どのように変化がありましたか?

 コーチングを学ぶ前は、受け身で、言われた事しか動かない店長に苛立っていました。彼はゼロから考える事もしないし、悪い事は人のせいにするところがありました。本音としては、店長自ら、どんどん店舗を切り盛りして進めてほしいという想いがありましたが、私からの注意や指示が彼の為にならないことは漠然と感じていたので、どうしたら彼の良さを引き出し、対等な関係を作っていけるのかと考えていました。

 しかし、コーチングを学び、店長に対する関わり方が変わりました。まず、私が彼視点を意識するようになった事です。彼の視点ではこの店をどうみているのか、どうやって彼は考えようとしているんだろう?という視点です。

 彼が選び使う言葉や単語には、彼の価値がある。そう思い、何を大切にしているのかと話を注意深く聴くようになりました。人柄も性格も正反対の彼。彼が消極的な態度を否定的に見ていましたが、過去の失敗した経験から「だから、こういう事はしないんだな」とか、「以前の会社でお客様に指摘された事があったから、こういうことをしなかったのか」など、疑問に思っていた行動に、ちゃんとした理由があったことが分かりました。

 そして、承認です。営業終了後にお店に行くと、「まず3つ、ありがとうを言おう」と決めました。忙しい日だったら「店長、忙しかったね。今日はありがとう。」と言葉をかけたり、私の気が付かない所を掃除してくれていたら「そんな事してくれとったんや!ありがとうね!」と言ったりして、彼の行動を承認しました。その段階を踏んでから、その日はじめて言いたいことを質問形式で訊いていきました。「あれは、なんでやったん?」って理由を尋ねると、彼なりの理由が返ってきました。以前より素直に気持ちや経緯を話してくれるようになり、そこから私の気持ちを伝えたり、アドバイスしたりするようになりました。

 現在、副店長の妹が育休に入っているため、私が数日シフトに入る以外は、全部店長一人でお店をまわしてくれています。60歳手前にして体力的にも、とても大変だと思います。それでも文句ひとつ言わず、「お店は、俺がなんとかやるから大丈夫。山ちゃんも忙しいから、そっちの仕事頑張りな。」と背中を押してくれます。とても安心できるようになりました。彼は、自分が山ちゃんから任されてお店を守ってる。そんな誇りや信頼されている責任感から、そのような言葉が出来てきたのだと思います。

コーチングが役立ったエピソードを聴かせてください。

 今は休業してしまったのですが、三重県いなべ市の移住相談に乗るお仕事の際に、より深く人と関われたと感じます。移住はお金もかかるし、人生の大きな分岐点にもなる事です。ただしっかり聴くだけでなく、質問を入れる事で移住の理由がはっきりしてくる。何かから逃げたくて移住を選択しているのか、本気で移住を望んでいるのか。

 例えば、「どういう暮らしがしたいですか?」「それは、いなべ市でなければいけないのですか?」「移住以外で、それを可能にできる方法ってありますか?」などです。

 そうすると、相談者もハッとなって「移住、やっぱりやめます」「いなべ市だけでなく他も見に行ってみます」「家に帰ってから、夫婦で久しぶりにしっかり話をしました」など、色々なお声を頂きました。もちろん、本気で移住したい方には全力で応援します。しかし、そうではないけれど「なんだか移住したい…」そんな方にも、真の自分の心と見つめ合う機会となり、多くの方に喜んでいただけました。「こんなに自分の話を、人に聞いてもらったのは久しぶりだ」と言葉を頂くと、心の中でガッツポーズをしていました。

コーチングセッションのエピソードも聴かせていただいていいですか?

 現在、女性起業家の思考整理コーチを行っています。その中で、目覚ましい成果を出された方がいます。動画制作をされているデザイナーで、個人事業主として6年されている方です。『自主制作の時間を増やしたい』という希望で来られました。今は請負のお仕事優先で、ほとんど自主制作の時間がとれていない状態なので、これをどうしていこうかと。

 そこで第一歩として、2ヵ月後にある有名なアニメーションのコンテストの応募を目標にしました。作品制作のために、どのように制作時間を作り出し、次のセッションまでにどこまで進めたらいいのかなど。本当に素晴らしい作品を作られ、コンテストではなんと、最優秀賞のノミネートまで到達されました!

 それだけに留まらず、年明けに動画に特化した株式会社を立ち上げる事が決まり、社名、アイコン、イメージカラー、顧客のターゲット層、どういったホームページにするかなど、彼女の力でどんどん準備や思考が進んでいきました。

 クリエイターだけあって、アイデアもどんどん湧きあがり、発動力もある方です。そこで、私はとにかくその方の思考や言葉の整理をして、現状把握を最優先しました。意識が先に先に行きすぎるので、今はどんな状態なのですか?と視点を変えながらの質問を投げる事で、自分自身の素直な気持ちに気が付き、自ら課題解決をされていきました。

 そうした積み重ねで、どんどんとクライアントの成果が上がり、もう本当に嬉しくて、嬉しくて。お母さんのような気持ちになりました。

コーチングを学んで、ご自身はどう変わりましたか?

 心が穏やかになりました。人の言葉で一喜一憂しなくなり、フラットに人の話を聴けるようになりました。今までは自分の価値や自分の正義とか、人の話を無意識のうちにジャッジしていました。「それ、私と違うな」とか「え、それってどうなん?」と思っていた気持ちから、「この人はそうなんだな」と素直に受けいれられるようになりました。

 共創コーチングの養成コースの時ですが、クライアントが負のループに入ってしまい「早くそのループから脱出させてあげなくちゃいけない。」とワタワタした事がありました。でも「一緒に共感するんだよ。」「コーチもどっぷり浸かるんだよ。そこから見えてくるものがあるんだ。」と教えていただき、それを活かしたセッションをできた時、クライアントと共に、すごく明るいところに一緒に出られた経験がありました。一緒に巻き込まれる感じでいいのだとわかってから、負の感情を静かに受け止め、事実を事実としてすんなり受け止められるようになったのです。そのことで、知人から、包容力がめちゃくちゃ上がったねと言われました(笑)。

 他にも「いなべあそび」という協議会を立ち上げ、様々な事業者の束ね役もしています。個性の強いメンバーを盛りあげ、まとめていくことは大変ですが、そこでコーチングスキルがとても役に立っています。

最後に、これからの目標について教えてください。

 私の10年後の目標は、「いなべのビッグマザー」になることです。

 中村舎を借りたのも、みんなに「おかえりさない」と言える旅館業をしたかったからです。コロナのことがあったので、まずは週末&祝日限定で20224月から飲食店「okudo中村舎:かまどごはん屋さん」を稼働させていきます。

 ここに来たら山ちゃんに会える。初めて出会った人も、昔から知っている人も、み~んなで竈で炊いたご飯や食事をいただきます。そこで出会った人が、昔から家族だったかのように笑って、話して、悩み相談して…。帰る頃には兄弟かのようになって、また会おうねとその場を分かれる…。そんな場所を作りたい。そんな温かい場所を日本中、世界中に作りたいです。

 そして、しばらくの目標は、中村舎を成功させること。中村舎を基軸に地方創生として、民間や行政、地元の人たちなど、色々な人を巻き込み立体的に動いていきます。結果はまだまだですが、少しずつ、相互作用が上手く回りはじめシナジーが生まれてくると、とても楽しいです。『いなべあそび』の取組みが少しずつ評価され、地方再生の手立てとして、私の視点からアドバイスが欲しいとの依頼もくるようになりました。

 最後に、みなさん、私の事を太陽だと言ってくださいます。でも、私は自分が光り輝きたいのではありません。光り輝かせたい人、まち、自然があって、そのために動きたい。私が目立っているようでは、まだまだ私の役割に辿り着けていないってことですね。私は根っからの、サポーター気質。お家でニコニコと待つ、いなべのビッグマザーになりたいのです。

ご飯たーくさん作ってさ。

子どもも大人もお腹いっぱいにご飯食べて。

しくしくしとったら、よしよしする。

悪い事しとったらば、バシッと叩く。

顔がうつむいてたら、話聞いて。

移住相談も結局、世話焼きなんです。

ほら、あそこのところ行ったら、わかるから、ほら行っといでさ。

あの人とあの人つなげたら、仲ようなるで、ほら。ってね。

そういうおかあちゃんに、私はなりたい。

そして最終的には、地球みーーーんなのお母ちゃんになりたいです!