• 受講生インタビュー

価値や強みに目をむけて、最高のチームを創る

PROFILE
耳鼻科 医療法人 事務長
徳永 雅之(とくなが まさゆき)

大阪府在住
大学卒業後、関西の中堅専門商社で営業、営業事務の統括、経理、販促企画等に従事。その後、複数の耳鼻科クリニックを展開する医療法人の事務長に転身し、医療行為以外の医院経営全体に従事。医院の掲げる理念を実践する組織を作るべく、日々背中と脳みそに汗をかきながら邁進中。60人ほどいるスタッフと「最高のチーム」を創るにあたって、コーチングに可能性を感じ、共創コーチングスクールに通うようになる。2019年、共創コーチ®︎を取得。

共創コーチングを学ぶことにしたのは、なぜですか?

共創コーチングを学ぶ2、3年前からコーチングは気になっていたのですが、コーチングを学んでいた知人の、人との関わり方や関わった人がイキイキとしていく様子に感銘を受け、本格的に検討するようになりました。

私は以前から、「仕事にやりがいを持ち、まずはその人自身が楽しむ方がより良いパフォーマンスが発揮できる。その結果として、相手の喜ぶ姿がその人の更なるやりがいにつながる」と考えていました。当時は、個人でも組織でもそんな好循環が広がるといいなという気持ちが沸々と湧き上がっていた時期でもあり、コーチングがそれを可能にするんじゃないかと感じていました。

いくつかのスクールの体験講座を受けた中で、共創コーチングに大阪から名古屋まで通う決意をしました。当時はまだ、今のようなオンライン受講はありませんでした。選ぶ決め手になったのは、2人のコーチの存在です。感性の人で、ビジネスの世界でエグゼクティブコーチなどの実戦経験が豊富な陽子さん、エビデンスベースドで理性的、教育の分野にも精通しているジョニーさん。この二人から学べるのは大きかったです。他のスクールは、ビジネス寄りだったりライフワーク寄りだったり、理論はわかるが実践経験の面で疑問を感じたりしたのですが、共創コーチングはどちらも学べ、バランスを重視する自分に合っていると感じました。また、質問をしたときの実体験に裏付けされた回答に、ここでなら深く学べそうだと思いました。

基礎コースの次の養成コースへの参加を決めたのは、「基礎コースと同じメンバーで一緒に学びたい」という気持ちが強かったからです。受講メンバーとは休憩時間でも「さっき話に出てたあれってどう思う?」「そういう見方もあるよね」などと議論がよく続きました。それは私にとって、とても刺激的なひとときでした。情熱のあるメンバーばかりで、みんなで語り合いながら学んだことを腹落ちさせることができました。誰から学ぶかと同時に「誰と学ぶか」も大切だと思います。

共創コーチングのスクールの中で印象に残っていることは何ですか?

初めて共創コーチングを受講した日の出来事は一生忘れないと思います。あれは、「リレーションシップ」の初日でしたが、一通り説明を受けた後に、陽子さんが「デモンストレーションをやりましょうか。誰かコーチ役してみませんか?」とコーチ役を募られたので、思い切ってチャレンジしてみました。
クライアント役の陽子さんが「私、◯◯のことで、どうしたらよいか分からないんですけど~」と自信なさげに悩みを打ち明けます。でも、私の頭の中では「ああしたらいい」「こうしたらいい」という解決策と同時に「あ、こっちが解決策を言っちゃいけない。質問で返す?え?どうやって?◯◯について考えさせる方がいいような・・・いや、これは誘導か・・・」と頭の中でぐるぐると回り始め、最終的には頭の中が真っ白になってしまいました。絵に描いたようなフリーズ状態でした(今思い起こしても、恥ずかしい)。
結局、当時の私は人の話を聞いているつもりだっただけで、いつも自分の中で評価や判断をしていたのだと思います。その人自身に関心を寄せながら本当の意味で「聴く」ということができていなかったんだと気づかされました。

「パーソナルベース」で習った「価値とニーズ」も重要な学びでした。価値は“その人が自然と惹かれる行為や活動のこと”、ニーズは、“その人が必要としているものことで欠乏欲求”です。価値に沿ったビジョンはとてもパワフルだということを習いました。それで、人の話を聴くときにはいつも、その人の価値やニーズに光を当てるようになりました。人は本当にやりたいことがバシッと見えたら、エネルギーが湧いてきますが、なかなか意識されていません。それを相手から引き出したいと思って関わっています。
スクールの中で陽子さんに「徳永さんは、場にエネルギーをもたらすよね」とフィードバックをもらったことは、私自身の価値に気づくきっかけとなりました。自分では意識していませんでしたが、過去を振り返ると自分には「活気づける」という価値があったのだと思います。陽子さんの言葉のおかげで、今ではその価値は私のエネルギーの源であり、意識して使えるようになりました。

コーチングを学んで、どんな変化がありましたか?

先日、想定外の所で変化を感じました。患者さんのクレーム対応をすることもあるのですが、以前は穏便に済ますことだけを考えていました。今は相手の話をまずは受け止めて、不満な気持ちや言い分を認めたり、その人が大切に思っていることに目を向けたりしています。患者さんの勘違いであっても「こういうところで不満に感じられたんですね」と一旦話を聴くようになりました。

ある患者さんは、話を聞いているうちに、インターネットでたくさんの医院を調べた末に「この病院なら信頼できるのではないか」と当院を頼っていらっしゃったことが分かりました。それで、私が「信頼を大切にされていて、当院を頼られていたのですね」と言うと「そうそう、俺が言いたいのはそういうことなんだよ。分かってるじゃない」とおっしゃられて、互いに理解し合うことができました。最後は、趣味の話で盛り上がり2人して爆笑していました。どんな人に対しても、腹を据えて関わり、相互理解を作り出すマインドとスキルは共創コーチングで得ることができました。これは、組織づくりにおいても活かせていると実感しています。

組織づくりの面で、スタッフとの関わりはどう変わりましたか?

何より、「聴く姿勢」が変わりました。例えば、スタッフとの面談の中では、その人の「エネルギーを消耗させていること」と「エネルギーの源になっている価値」に目を向けることでしょうか。特に、何かしらの不安がある状況では、多くの人は、言っていることとは別の何かが引っかかっていたり、主張とは異なることが本当はやりたかったりすると感じます。それで、スクールで習ったタイプ分けなどを意識していろいろな角度から聴いていくようにしてます。

ある時、スタッフのAさんとの面談で、「モチベーションが下がっている。自分の立ち位置が分からない」という話を聴きました。「どんなときにそう感じたのか?」などと対話を重ねるうちに、Aさんは「組織の体制が変わって、◯◯さんとの関係に距離ができるかもしれない。それが不安なのかもしれない」と気づきました。さらに対話を続けると、Aさんは「考え過ぎて動けなるなる自分の癖」や「よくよく考えると取り越し苦労でそれほど心配はする必要はない」といったことに気づき、ネガティブな状態からフラットな状態に変化していきました。

その後も、新しい環境の中でやりたいことや得意なことを話し合う中で、「何かを創ること」「人の世話をすること」がAさんの価値であることが見えてきました。そして、「後輩も活用できる今より実用的なマニュアルづくり」といった、Aさんがやりたいことでメンバーにも貢献できる具体的な行動が出てきました。Aさんは、面談の当初とは打って変わってスッキリとした表情をしていました。

組織づくりでは、どんな成果がありましたか?

医療事務のリーダー会議では、コーチングの要素を取り入れています。新たにリーダーになった人もいたので、信頼関係を育みたいと思い、半年ほど前から月に1度チームビルディングとしてミーティングを行っています。

最初は、「これまでの人生でイキイキとした体験」を互いにインタビューし合うというワークをしました。その次は、それぞれの「価値」や自組織の「共通の価値」について対話をしました。過去の体験から互いに大事にしていることを分かち合うことで、リーダー同士の関係性や一体感がじっくりと着実に深まっていきました。「普段話さないようなことを聴けて良かった」という声も聞えました。お互いを理解し合う場をつくることで、得意なことだけでなく苦手なことや弱気なことも少しずつ言い合えるようになり、心理的安全性のある場が作れたと思います。

それぞれのリーダーが「業務改善がしたい」、「理念浸透がしたい」など、自分の価値に直結したやりたいことを言うようにもなりました。以前は、理事長と事務長の私が考えたことを「こういうふうにします」とトップダウンで伝えることが多かったのですが、今ではリーダーが自発的に考えて動きはじめています。

徳永さんの目指している「最高のチーム」について、もう少し教えて下さい。

ズバリ、「バスケットボールチーム」です。学生時代はバスケ部だったのですが、バスケは展開が早く、コンマ1秒で状況がガラリと変わるスポーツです。一人一人が刻々と変化する状況を感じ取り、一瞬のスキをついてパスを通すには「あいつはパスをくれるはず!」「あいつはあそこに動くはず!」といったお互いの信頼関係が欠かせません。
また、チームは5人しかいないため、それぞれの役割や個性が際立ちます。例えば、ポイントガードは身長が低くてパスやドリブルが上手く、全体を見ることができる人が多いです。一方、センターは背が高くてパワーがあり、ゴール下で得点を決めることができる人が多いです。ドリブルは苦手でパワーがなくても、長距離のシュートが得意な人もいます。そんな、お互いの強みも弱みも認め合い、活かし合うことで最高のチームが生まれます。私は組織のチームの中でもバスケのようなチームが再現できたらなと思っています。

私の考える最高のチームは、働く人が強みを発揮しつつ、ワクワクしてやりがいをもって働いているチームです。社会にも貢献できていて、その貢献感がまた働く人のやりがいに繋がっている、そんなチーム作りを目指しています。コーチングは、個々の強みを発揮させるため、そしてその人の価値に沿ったビジョンを描かせるのに役立つと思います。そんなコーチングは、私にとって「最高のチーム創りに欠かせないもの」です。