• 受講生インタビュー

心理的安全性のある場を作り、パワーのある幼稚園に!

PROFILE
私立幼稚園園長 東京都私立幼稚園連合会理事
大矢路子(おおやみちこ)

家族:夫、娘、母、犬
研修で稲垣夫妻と出会い、共創コーチングを学ぶ。
2020年共創コーチ®資格、共創コーチング研修の資格を取得。
インクルーシブ教育の重要性を感じ、2021年 発達障害支援士の資格取得。
保護者を対象とした子育てサロン「ミチコの部屋」を開催し好評を得ている。

共創コーチングに興味をもったのは、なぜですか?

私は、小さい頃から友達とケンカしたときに「ごめんね」と謝ればいいところを、自分は嫌われちゃったんだと引きこもってしまうところがありました。大人になってからも「自分は周りから良く思われていない」と感じるところがあり、自分は人付き合いが上手ではないと思っていました。そして、それは自信のなさにも繋がっていました。

人とどう付き合っていったら良いかずっと模索していたので、いろいろな研修に行っていましたが、あるとき別のコーチング研修に参加しました。その時はいいなと思ったのですが、それっきりになっていました。

それから5、6年して私学財団からコーチング研修の案内が来たときに、また行ってみようと思いました。
東京の飯田橋での研修で、講師はジョニーさんと陽子さんでした。以前に受けた研修とは全く違っていて、「これが自分の学びたかったことだ!」と思いました。それで、夏休み2日間の研修の後、自分で調べて共創コーチングのスクールに名古屋まで通うことにしました。

共創コーチングのスクールに通って、よかったことは何ですか?

心理的安全性(一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態)のある場を作ることの大切さについて学んだことです。共創コーチングの学びの場で、私自身が話を聞いてもらったり、承認されたりしたことで、実際に心理的安全性を頂いたのだと思います。
私のありのままをジョニーさん陽子さん、受講メンバーが受け入れてくれました。陽子さんは、「なんでもいいんだよ」「間違いはないんだよ」とおっしゃってくれました。受講メンバーも私のことを親身になって一緒に考えてくれました。

私は、小さい頃から落ち着きがなく先生に怒られていて、親にも「じっとしていなさい」と言われてきました。ジョニーさんから、「小さいときは強みが荒々しく出てしまうので短所に見えてしまうことがある」と教わり、そうだったんだと思いました。
また、私は園長としてきっちり落ち着いた雰囲気でいなければといつも思っていました。私が勤める幼稚園は新宿区にあり、保護者も意識の高い方が多いからです。でも、スクールの中で「いやいやそれは大矢さんじゃないよね」という話になりました。受講メンバーも「そのままでいいんじゃない」、「おてんば学園でいいじゃない」と言ってくれました。それで、元気ハツラツなもともとの自分を幼稚園でも出していくことにしました。スクールに通ったことで自己肯定感が上がり、自分らしくやっていけばいいんだと思えるようになったんです。

大矢さんが変わったことで、先生たちはどう変わりましたか?

2019年の9月からスクールに通い始めて、次の月にすぐに運動会がありました。ジョニーさんに「運動会で何がしたい?」と聞かれたので、私は「応援したい」と答えました。「大矢さんがチアリーダーみたいになればいいんじゃない」と言われて、それで先生や子供たちを思いっきり応援してみたところ、子供たちが伸び伸びし出しました。

私自身が心理的安全性を頂いたことで、いろんなことをやろうと思えるようになったので、園内でも心理的安全性作りを進めていこうと思いました。それで、「できるよ、いいよいいよ」と頻繁に伝えていったら、子供たちも先生たちも凄く良い物を出してきました。

運動会は途中から雨が降ってきてしまったのですが、雨の中、子供たちが真剣に組体操をやり遂げて感動しました。頑張る子供たちを見て、保護者の方にも喜んで頂くことができ、幼稚園への評価も上がりました。コーチングスクールに通い出してから、私が変わったからか、幼稚園全体がパワーのある感じになってきました。先生たちの変化に保護者が気づいてくれたときは、本当に嬉しかったです。「先生たち変わりましたね」「何かのスイッチが入ったんですか?」と保護者の方から言われたんです。

以前は、先生たちの中にも「うちの幼稚園はこんな幼稚園」という固定観念があり、毎年決まったことをやる風潮がありました。それで、正直面白くないなと思うこともあったので、運動会の次の行事である展覧会では発想力のある先生たちのアイデアを引き出していきました。「いいねいいね、やってみよう」、「私にできることがあったら言ってね」と声をかけ、新しいことを次々取り入れていきました。先生たちそれぞれの得意なところに投げて、任せるようにしていきました。すると、先生たちは元気で活き活きしてきて、自分で考えてどんどん行動を起こしてくれるようになりました。

具体的には、先生たちに対してどんな働きかけをしていたのですか?

承認」と「話を聞く」の二つを意識して関わりました。以前は、私が主任と話して、主任が先生たちに下ろすという形だったので、先生たちと私の間に距離がありました。今はダイレクトに私の気持ちを伝えるので、気持ちが通じていると感じています。また、「自分らしく、自分の強みを活かして働いて下さい」と事ある毎に先生たちに伝えるようにしていたところ、先生たちも卒園していく子供たちに「◯◯ちゃんらしく、楽しく過ごしていってね」とメッセージを書くようになりました。私の願いが先生たちだけでなく、子供たちにも届いていると思うと嬉しいです。

担任は、毎日保育の記録を書いた日誌を私に提出します。そこには、保育のこと以外にも先生の気持ちを書いてもらっています。それに対して、私からも毎日コメントを返します。そのときには、「頑張ったね」「それってすごくいいよね」、「あなただから気がつくんだよ」など、先生の強みを探し出して伝えるようにしました。
私がコメントを書くときには、スクールで習ったコミュニケーションのタイプ分けを意識しました。私は、自分が判断したいタイプや慎重なタイプを苦手としていたのですが、タイプ分けを知ったことで相手は私のことを嫌いなわけではないんだ、コミュニケーションの取り方が違うだけなんだというこ

とが分かるようになりました。それで、タイプに応じて具体的にコメントを出すようにしました。

担任の先生8人とは、1on1(上司が部下に行うコーチング)も月に1回行っています。また、14人ほどいる他の職員には、学期毎に1on1をしています。忙しいので初めは快く思わない先生もいました。それでも実際に1on1を始めてみると、園長である私に話を聞いてもらえるのは嬉しかったようです。特に、私と日誌のやりとりのない助手と副担の先生たちが喜んでくれました。「自分の考えていることと園長先生の考えていることが同じでホッとしました」という声も聞えてきました。私が気にかけていることが伝わったのではないかと思います。

コロナ禍では、どんなことがありましたか?

2019年度の3月、コロナの流行で緊急事態宣言が出て、ぱたっと幼稚園は休園になりました。
締めのない終わりは子供たちによくないと思い、何か子供たちに配信していこうと提案しました。すると、YouTubeの限定公開の案が出て、それを始めることになりました。先生たちがお遊戯を踊ったり、歌ったり、絵本を読んだりするのを配信しました。卒園式の練習もできないので、証書の取り方や歩き方を流して、家庭で保護者と練習してきてもらいました。3月2日の休園直後から動画配信を始めたことで、保護者の方に本当に喜んで頂けました。

2020年度の始まりも、入園してきた子供と先生が直接合うことができませんでした。それで、先生たちに子供1人1人に手紙を書くように提案しました。大変なので先生たちから抵抗もあったのですが、保護者に好評だったので週に二回ほど手紙を出してくれました。
年少組は先生も知らないので、「◯◯ちゃん、こんにちは。あなたは◯◯組です。◯◯ちゃんの先生です」という動画を流しました。子供たちが登園してくるバーチャルの動画や、先生が出席をとって自分の番になったら返事をする動画も作りました。6月から園が始まったのですが、子供たちがこちらのことを知っていて、ものすごく良いスタートを切れました。子供たちも保護者も喜んでくれていたようで、やってよかったと思いました。もともとYouTubeが得意な先生もいたのですが、そうではない先生も努力してくれて、いろいろなアイデアを形にできました。

実は、まさに20年の3月から半年間の養成コースがスタートしたんです。
上記の取り組みができたのは、その時の仲間やコーチにも相談できたし、励まされたことで、アイデアを形にすることまで諦めずにやれました。

リーダーがコーチングを学ぶよさは何だと思いますか?

リーダーって発信する力も大事だと思うのですが、話を聞くことや相手の強みを見つけて活かしてあげることがもっと大事だと思います。同じグループに属している人は、同じ思い、やる気を持っているということだと思います。だから、その部分を刺激しなくても、心理的安全性のある場を作ってあげることやその人の強みを信頼することだけで相手は力を出してくると思います。1人1人にスポットを当てて、承認していくことで心理的安全性が作れると思います。

大矢さんにとって、コーチングとは何ですか?

私にとってコーチングは恩人です。私を目覚めさせてくれたと思います。コーチングを学んだり受けたりしたことで、『飾らない自分。自分は自分のままでいい』と思えるようになりました。自分では当たり前と思っていたことが、そうではなく強みだと言うことにも気付きました。自分では思いつきで動いてしまうと思っていたのですが、「いつも勉強してるね」「みんなのこと考えてるね」と受講メンバーからフィードバックをもらい、自己肯定感が高まりました

コーチングで自分も変わるし、人も変わります。コーチングによって周りの人を幸せにしてあげられると思います。幼稚園もさらなる人気を得ることができています。