• 受講生インタビュー

今、自分のやりたい仕事ができているのはコーチングのおかげです!

PROFILE
国内原薬メーカー勤務、主席研究員 博士(工学)
山口 直人(やまぐち なおと)

岐阜県在住
フイルムメーカー、製薬会社、食品会社を経て2010年より現職。
2012年頃、職場活性化のための案としてコーチングの導入を提案し、その窓口を担当。その後自身も共創コーチングの基礎講座から参加し始め、2016年共創コーチング®の資格を取得。
植物好きで学生時代に光合成研究と出会い、同分野で研究を続けたいとの思いもあったが、就職後は主に医薬品や機能性食品の研究開発に従事。現在は、植物由来の有効成分を効率良く体内に届ける技術の研究開発を行っている。

コーチングとは、どのように出会いましたか?

最初はコーチングという言葉を知りませんでしたが、2005年頃にTVで「答えはクライアントの中にある」というカウンセリングのようなものを見ました。私が2010年に海外から日本に帰ってきて転職するタイミングで、家内も仕事をやめなければならなかったので、最初は家内に向いていると思い、やってみたらと勧めました。そのときは、まさか自分が学ぶことになるとは思ってもいませんでした。

転職後は、急ぎの業務として研究開発部の中で薬制を担当しました。薬制とは、基準に従って薬を作っていることを届け出るために関係当局や顧客あるいはコンサルタントなどと連絡をとったり書類を作成したりする業務です。当時、研究開発部としては、「新しい商品を出したいけれどアイデアが出にくい状態」が続いていました。

職場には新しい商品を出そうという雰囲気が薄く、それには原薬を作っているので失敗が許されないという背景がありました。既存の製品を基準通りに作る、あるいは製造方法を改良するというのが普通で、新しい製品を自分のアイデアで創り出すという経験が少なかったのです。でも、会社としては、このままでは先細りになってしまうので新しいものを生み出さなければなりませんでした。

私は研究開発部の主席研究員だったので、新しいものを生み出せるように「職場を活性化」するためにはどうすればよいか考えました。若い人たちが上から仕事が降りてくるのを待つのではなく、挑戦できて失敗できる雰囲気に変えていきたいと思いました。

これはコミュニケーションが鍵だなと思い、ふとコーチングって役に立つんじゃないかなと思いました。私の職場では、「いかに事故をなくし、間違いなく効率をあげて、コストを下げていくかのコミュニケーション」はよく取れていましたが、「新しいものを生み出すためのコミュニケーション」は取れていなかったからです。

そこで、ホームページでコーチングを探しました。最初は岐阜県内の方に依頼したのですが、縁あって、稲垣夫妻に会社に講演に来て頂くことになりました。その後、グループコーチングを研究開発部の課長クラスから導入し、係長まで行いました。私は、直接グループコーチングに参加したわけではなく、そのときの窓口を担当しました。コーチングを導入したことで、課長同志あるいは部下に接する態度に変化があったと感じました。以前は、なかなかお互い腹を割って話せない部分もあったようですが、それが少し開けてきたのではないかなと思いました。

窓口を担当した山口さんが、自分でも共創コーチング®︎を学ぶことにしたのはなぜですか?

一つは、最初に出会ったコーチに、「なぜ、山口さんが担当しているのですか?」と質問されたのが印象に残っていたからです。そのとき答えに詰まって、「自分だけがコーチングが役立つと感じているから」と答えました。そのとき、自分の中で靄が晴れた感じがしました。それまでは、何で技術系の自分がコーチングを導入しようとしているのかなと思うこともありました。でも、質問されて改めて考えたときに、私の中でギアが入った感じがしました。「コーチングの導入は、僕がやるべきことなんだ!」と腹に落ちました。そのとき、私はコーチングの効果を初めて実感しました。

もう一つは、会社にコーチングを導入するために、本を読んで勉強しているうちに、これは世の中のあらゆる人にとって必要だなと思ったからです。私が共創コーチングスクールに通い始めた2014年頃、稲垣夫妻の「共創コーチング®」は一般の書物や大手コーチング会社のメルマガなどから想像するコーチングとは一味違っていて、私にとっては“前衛的な”感じがしました。

一般的に“答えはクライアントの中にありコーチは引き出すことはしても直接影響を与えない役だ”と考えられていました。一方、共創コーチングでは、“答えはクライアントとコーチの間にあり共に創るものだ”と教えられました。コーチング自体もまだ進化の途中であると学び、「その最前線を自分も体験したい」という思いから、自分でもコーチングを学ぶことにして、基礎コースだけでなくプロコースまで進みました。

共創コーチ®養成スクールで印象に残っていることはありますか?

「感情をどうキャッチするか」を学んだことが、印象に残っています。そこからは、多くの人が感情で動いていることを意識するようになりました。もともと理系で生きてきたので、「こうなるはずだ」という理屈で多くの人は動いていると思っていました。感情に対して無自覚だったんです。

でも、感情について学んだことで、「~べき」「~あるはず」という理屈では解決できない感情の起伏が感じられるようになり、そこに付き合えるようになりました。感情が分からないから、スルーするか、はねのけるかだったのが、感情がキャッチできるようになって「もう少し待とうかな」「そういう状況なら仕方ないか」と優しくなったと思います。

スクールでロールプレイをしたときには、私が息子の役をやって、コーチが私の役をやるというセッションをしました。私は息子になりきって、いろいろと言い訳をしました。そのときに、「ああ、彼はこういう気持ちでこう言ったのか!」と発見がありました。感情が高ぶると人は因果関係を無視することがあ

ります。親から見ると「それは間違っている」と諭そうとするのですが、そこには息子の悲しい気持ちがありました。ロールプレイをした

ときに、「ああそうか!やっぱり理屈じゃないんだ。自分の中に起こった悲しい気持ちは理論で説明されても消えないんだ」と気づきました。それよりも、気持ちを分かってくれる方が嬉しいんだと

思いました。だったら、もっと違う接し方があるなと思いました。それは、テキス

 

トから学ぶことではなく、ロールプレイをやってみて初めて分かったことでした。

実際、子どもたちにも「お父さんは、名古屋に行ったら優しくなって帰ってくる」と言われました。家内も「夫がこれを習っていることは家族にとってプラスになっている」と感じたようで、基礎コースを終わった後も、家族はプロコースに進むことを賛成してくれました。

コーチングを習ったことで感じている成果は何ですか?

2017年ぐらいまでは、急ぎで大事な仕事に集中していたのですが、その後、急ぎじゃないけれど重要な仕事に意識がいくようになっていきました。2018年とか2019年頃には、自分で提案して実験して、特許出願ができるようになりました。

それまでは薬制の業務が主でしたので、研究を外の立場から手伝っているというところがありましたが、そうではなく自分が自発的に中に入って研究をやり始めたところ、誰も私を止めませんでした。「これが本来の僕の仕事だったんだ!」と思いました。その背景には、一緒にコーチングを学んだ仲間たちからコーチングを受けたことがあります。自分が本来やるべき事、やりたかったことが徐々にできるようになったんです。最初は実験している若手の研究者に声をかける頻度を増やすことから始め、実験室に居る時間が長くなるにつれて自分でも手を動かして実験するようになりました。

今は、自分が一番得意なところを活かして、研究開発ができていると思います。研究開発は、失敗することもありますが、もう少し突き詰めて見ると次の道の鍵がそこに落ちているということがよくあります。そういう自分がやっている姿を若い人に見てもらって、「失敗はするけど発見はあるよ」というのを背中で見せることができればと思っています。

会社では、自分たちで特許を出して商品にしようという取り組みが始まっていて、まだ売上には繋がっていませんが芽は出たかなと思っています。特許出願は何人かでディスカッションしながら行うので、一人でやって上手くいかなかったことが、別の考えの人と話して上手くいったということもありました。また、全部自分の思い通りにしようとせずに、それぞれのやり方を尊重し、懐を深く見守るように意識しています。

コーチングを学んだことで、職場の人たちとの関わりは変わりましたか?

グループコーチングや、マネージャー職がコーチングを学ぶなど、組織としてコーチングを活用する会社にしていきたいとは思っていますが、それは遠い道のりにも感じます。それでも、自分自身が変わることはできると思いました。

研究開発に自発的に関わるようになったことで、私は活き活きと働くようになりました。実験は楽しいので、表情も前より柔らかくなったと思います。課長クラスはデスクに居る時間が長いので話すことはできますが、若手は実験する時間が長いです。デスクにいると声をかけづらいと思いますが、実験室にいると若手と過ごす時間が長くなり話しかけられることも増えました。実験室でのコミュニケーションが、彼らのプラスになるといいなと思っています。機械の使い方などは若手の方が詳しいので、私の方も聞いたりしています。

部内のブレインストーミング(会議)でアイデアを出したいときには、スクールで習った「シーソーの法則」も意識するようになりました。以前は主催者や上席者の発言機会が多く、時間も長くなる傾向がありましたが、最近は上席者の発言数や時間を限定しています。そうすることで、普段あまり発言していない若手に発言を促すことができ、彼らの意見を尊重できるようになってきました。

研究者がコーチをつけたり、コーチングを習ったりすることには、どんな意味があると思いますか?

アスリートや経営者にコーチがいるように、研究者もコーチを付けるべきだと思います。そうすることで、研究者は発想が豊かになって、チャレンジしやすくなると思います。また、自分のやりたいことに素直になる気がします。研究者は、研究費の関係もあって、自分が研究したいことではなくて、世の中が求めていることにどうしてもいってしまうんです。でも、本来はその人の好奇心が大切だと思うんです。コーチをつけることで、より研究が深くなり、研究らしい研究が増えていくと思います。

また、研究者がコーチングのスキルを身につければ、理屈っぽさだけではなくなり、よりコミュニケーションが上手くいくようになると思います。研究者は、自分で考えたり、実験してものを見たり、本を読んだりして何かを作り出すのは得意です。でも、人との会話の中で何かを生み出すのは得意ではない人が多くて、それは損をしているのではないかと思います。研究者がお互いにコーチングのテクニックを使えば、もっと新しいものを生み出す可能性が広がるはずです。

この記事を読んでいる人に伝えたいことはありますか?

コーチングスクールで学んだことは、本職や家庭でのコミュニケーションなどあらゆるところに影響してきて、自分の見方や考え方が本当に変化します。例え資格を取ってコーチングのプロにならなかったとしても、他の受講者との間でコーチングを体験することはとても重要なことだと思います。共創コーチングで一緒に学ぶ仲間たちは、知性が高く個性的で、エネルギッシュだったので、私にとっていい刺激になりました。それぞれの分野で自分自身に磨きをかけている仲間たちに接して、自分の分野でもがんばろうと思えました。

今、自分がやりたいことに向き合えているのは、コーチングに出会ったからだと思います。自分の中からエネルギーを生み出すのに、コーチングを受けることは本当に役立つと思います。コーチングを勉強して、本当によかったです。